リクエスト

□だって兄だもん
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【だって、兄だもん】

「ひっ…!」
 とある下仕官が、食堂から後ずさりしていくのを、エイジは不思議そうに見ていた。その下仕官の視線を覗き込むと、ほぼ中央で、金の頭をみつける。あのテールはまさしく、この司令部の司令官だ。

 確かにいつも、下仕官たちがちょっと離れて食事をしていることは通常だ。畏怖しているというより、関わりたくないというのが、本音だろうが。

 それに、今の下仕官だけではなく、いつもよりさらに遠巻きに見ているような…。
「どうした、エイジ」
 ふと声をかけたのは、エネルだ。
「いえ。准将がいるんですが、下仕官たちが遠巻きに見てるな〜と思って」
「いつものことじゃん」
「まあ、そうなんですけど」
 エネルが司令官の方へ向かったので、エイジもそちらのほうへむかった。
「ひっ…!」
 次に表情が変わったのは、エネルだ。
「?」
 エイジが不思議そうに覗き込むと。
「うわ…」
 これか、みんなが遠巻きに見ていた理由は。

 エドワードは一冊の本を読んでいた。それだけなら、まあ普通のことかもしれない。だが、その顔は。
 
「あえていうなら、お姫様にあこがれる少女のような?」
「オヒメサマねぇ。ククク」
キラキラの星を纏って、瞳はこんなに輝けるものなのか、というほどキラキラで。
「誰も近づかないはずだな」
「はは…」
 エネルは、エドワードが持っていた本をひょい、っともちあげた。
「うわ、なんだよ!エネルッ!」
「下仕官たちがびびってんだよ!」
「へ?なんで?オレは今この小説に夢中なんだ」
 エネルから本を奪い返すと、エドワードは恋愛小説にあこがれる少女のようにその本を
掻き抱いた。
「だから、そのおまえのキラキラお目めが怖いんだよ!」
「うるせぇ。オレは、今から一大プロジェクトを立ち上げる!」
「プロジェクト…ですか?」
 エイジも加わると、エドワードは耳を貸せ、と二人に耳打ちする。
 こしょこしょと話終わると、

「ぷっ。だはははははは!」
「あはははは!!」
「わ、笑うなっ!オレは真剣だ!」
「だ、だって!あははは!」
「ひっ〜ひい〜おまえやっぱ、バカだ、ばか!天才とバカは紙一重というより、バカだ、おまえは!」
「で、でも!おまえらだって兄弟の上なんだから、一度はあこがれただろ!?」
 エイジとエネルはぴた、っと笑いを止めて向き合った。

「俺にはカワイイ〜妹だからな〜妹がそう呼ぶのは、嫌だなぁ…。なんせ超カワイイし」
「う…」
「僕は、気にしませんでしたけど?今、弟が生きていたとしても、べつに気にしません」
「だって、だって、だって!カッコイイじゃんっ!」
「そうですかぁ〜?」
「でも、どうやって、その一大プロジェクトを成功させるんだ?」
「ん〜」
「素直にお願いするのが一番早いと思いますけど…。でも」
「だははは!俺は絶対言わないとおもうぜ、あいつのことだ」
「なんだか…イメージじゃないですよねぇ。その小説の主人公が、そう呼んでるんですよね?どういう性格なんですか?」
「えっと弟はやんちゃっていうか、猪突猛進というか、そういう性格で、兄が抑えるカンジ?」
 はあ、っとエネルはあきれた溜息をついた。
「そりゃ、無理だぜ、エド」
「なんでだよ!」
「だって、…」
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