よみもの アルエド(未来軍部)1

□イタズラ
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 キットがホルスターから銃を抜こうとした。
だが。
「ひっ・・・!」
 抜くまえに、瞬時に錬成したアルフォンスのナイフによって、それは阻まれた。
「このスピードで錬成できます。いかがです?」
 そのナイフはキットの首筋にヒタリと当たっていた。
「い・・・いいだろう。はな・・はなせ・・・」
 こういうときの笑顔のアルフォンスは怖い。それは、ロイとエドワードの共通見解だった。
「よし、じゃあ、俺の執務室へどうぞ」
 エドワードは、爆笑しそうなのをなんとか耐え、彼らを自分の執務室へ案内する。革張りのソファに座るのをまって、エドワードはテーブルにどさっと紙の束を置いた。
「・・・・。鋼の」
 エドワードはにっこり笑っている。
「わたしの研究は、カンタンにいえば天候に関するものです。読んでいただければ、わかります。三百枚まで数えたんですけど、完成レポートが何枚になったかわかりません」
「なんだ、この量は!もっと要領よくまとめられなかったのか!貴様こそ無能じゃないのか!」
 エドワードは怒らない。その前に座っているロイが、最初の五枚ほどを読み上げていた。
「・・・。いえ、キット少将。これは、貴方が理解するまで三年はかかるんじゃないでしょうか」
 キットはロイから紙を渡されて、読みだす。
 すると、みるみるうちに顔が青ざめて、唇が戦慄く。
「っ!」
 錬金術を研究する研究員、国家錬金術師となれば、このレポートの内容がまとめられなかったから、という理由の量ではないことがわかる。
「早く理解してくださいね。資格が剥奪されるといけませんから」
 そうサワヤカに言ってみせるエドワードに、ちょうどお茶を運んできたアルフォンスがクスリと笑った。
「兄のレポートは、研究を傍でみている僕でも半分しか理解できてませんから、あなた方ですと、三年くらいかかるんではないでしょうか」
「それを読むまえに、十冊の文献を熟読することをお薦めします。書き出しましょうか?」
「っ!」
「確か、セントラルの図書館にもありますよ。えっと、二階の奥の部屋の右から三番目の棚に一冊と〜・・・」
「もうよい!査定の合否は追って、連絡をいれる。それを運ぶように」
 アルフォンスの指示でガネットとローズが入室して、その研究レポートを持ち、退室するキット少将の後に続いた。
「鋼の。この短期間でよくやったな、あれだけのレポートを」
「おう。もう金輪際こういう査定やめてくれない?忙しいからよ。上層部はヒマらしいな」
「いいだしたのは、あのキット少将だ」
「はっ。丁度よかった。軍所属の国家錬金術師よ、俺に感謝しろ〜。ついでに、あいつを前線送りにしてくれよ。研究所なんかにどかっと座ってるから、ばかげたことやりたがるんだよな。あいつ、気にいらねーしよ」
「はは、考えておこう」
「それで、マスタング少将は大佐のレポート理解できますか?」
「わたしを見くびるな。これでも、酸素を扱う人間だぞ」
「へへ、じゃあ今週いっぱい猶予やるから、理解してくれよ」
「わるいが、まだ西にもいかねばならん」
「逃げたな・・・」
「忙しいんだよ」
 そういうと、ロイも腰を上げる。
「では、帰るとするか。じゃあな、鋼の。アルフォンス」
「おう」
「はい」
 二人は送ろうとしたが、ロイは遠慮し、そのまま二人は部屋に残った。そして、エドワードはくくく、あははは!と大笑いしていた。
「みたかよ、キット少将の顔!」
「クス、うん。彼じゃあ理解できないだろうね」
「いい気味だぜ。さーて・・・・あれ?」
 エドワードの体がぐらりと崩れ落ちそうになり、アルフォンスはあわてて兄の体を支えた。
「兄さん!」
「わりィ・・・もう限界かも」
 そのまま、眠ってしまったエドワードだった。
「あれだけ徹夜すればね・・・」
 ため息をついて、アルフォンスは兄の体を抱き上げ、そのままソファにそっと寝かせていた。
 悪戯には、全力投球。
 これは昔からかわらない・・・・。

オワリ
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