よみもの アルエド(未来軍部)1

□国家錬金術師とは?
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 翌日、司令部にアルフォンスとキラはいき、エドワードは休暇としてキラの姉がいる場所へとむかった。
 微かに緊張しているキラに、アルフォンスは和ませるように話をするが通常業務もあるため、なかなか相手ができなかった。だが、ふとキラがそわそわしたようにたずねる。それは、昼過ぎのことだった。
「ねえ、まだ帰ってこない?」
 キラがアルフォンスにそう聞くが、
「うん・・・。まだだね。ねえ、キラは兄さんが嫌い?」
「・・・国家錬金術師はみんなキライ」
「そっかぁ・・・。残念。僕も、国家錬金術師なんだよね」
「!」
 キラは驚いて目を見開いた。
「うそ・・・。だって、アルフォンスは優しいし、それに・・・」
「国家錬金術師だって、いろいろいるんだよ。キラが嫌うのも分かるけど、国家錬金術師はただ人間兵器とか呼ばれてるだけじゃない。役に立つように錬金術の研究をしてる人もいるんだよ。兄さんはいまでこそ軍の人間だけど、12歳で国家錬金術師になったんだ。たくさんのお金に目が眩んで軍の狗に成り下がったって、言われたこともある。だけど、僕を助けるために自らそんな茨の道を選んだ。そんな兄さんを僕は尊敬しているし、愛している。
兄さんは、気が短くてすぐ怒るけど、本当は優しい人なんだよ・・・。弱い人を全て助けたくなる人。だから、時には関係ないって顔してるけど、本当は助けられないから、辛さが分かるから、その思いを内に秘めて苦しんでいるんだ。だから、キラの気持ちもすごく理解して、ああやって助けようとしている。本当は、大佐という地位は単独では動けないんだよ?だから、休暇扱いしてるんだ」
「・・・」
 キラは俯いていた。
「12歳って、私と同じよ・・・」
「そう。そんなときから、兄さんは僕を守ってくれてたんだ・・・」
 その言葉は、アルフォンス自身にいっているようなつぶやきだった。目を細めて遠くを見つめる。
赤いコートと金の髪。にかっといつも明るく笑ったかとおもえば、眉をひそめたり。国家錬金術師になると、決めたときの強い意思の現れた瞳。
辛い機械鎧の手術も声を出さずに耐えた。
精一杯大人のフリをして生きてきた。
汚さや、目を覆いたくなるような現実から、一生懸命生きて、自分を守ってくれた。
そんな兄を、悪く言われるのは、アルフォンスにとって耐え難い。同じ非難を自分にも浴びせてくれと。アルフォンスは自分も国家錬金術師だと、国家錬金術師を嫌っている、少女に告げたのだった。


「わりぃ、遅くなって・・・」
 エドワードが帰ってきたのは、夜七時をすぎていた。その隣には、金髪碧眼の少女が立っていた。
「・・・・き・・・キラなの・・・?」
「姉さん!」
 キラとティアは抱きつき、ともに涙を流していた。そんな二人の様子を見て安心したのか、エドワードはペタンと床に腰をおろしてしまう。
「兄さん」
「わりぃ、疲れた」
 見ると、兄の顔に傷跡がいくつかある。
 アルフォンスは、まさかと思ってエドワードの右腕の袖をめくる。
 そこには、痣や擦過傷など、無数の傷がついていた。
「どうして・・・」
「ワケは後で話す」

「キラ、あのひとがね。エドワードさんが、私を助けてくれたのよ」
「助けてくれた?」
「うん。私は借金のカタに売られたのよ。それをエドワードさんがお金を出してくれたの。それだけじゃない。頭を下げてくれた。殴られようが、蹴られようが、彼が必死で頭を下げて頼んでくれた。キラと一緒に住めるように・・・」
 涙声でティアは話す。妹を放さないように。
「よかったね、キラ。ティア。これからは施設に行くことになるけど、二人で生きていけるよね」
「はい」
 ティアはアルフォンスに笑顔をむけた。だが、キラはエドワードのほうへいく。
「よかったな、キラ。姉ちゃんと元気でな」
「・・・酷いこといって、ゴメン・・・」
 キラはそういって頭を下げたのだった。
「何いってんだよ。俺は嫌われるのはいつものことだからな。気にしてねーぜ。とにかく、生きていればどうにでもなる。足があるんだ。二人で前にすすめ!」
「うん・・・!。ありがとうエドワード」
「姉妹離れ離れは寂しかったもんな。姉ちゃんに存分に甘えろよな」
「うん・・・うん・・・!」
 キラは涙を流しながらも微笑む。嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。
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