よみもの アルエド(未来軍部)1

□国家錬金術師とは?
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やがて二人は、エドワードが手続きをした施設に女性下仕官と向かうことになった。
「また、遊びにこいよな」
「うん!」
「ありがとうございました」
 キラとティアは手をふって、笑顔のまま司令室を後にした。

「いったな・・・」
「うん。で?兄さんの怪我は?」
「ティアが借金のカタにされてて、売られてたんだよ。だから金を払って、頭さげたら、殴られた。まあ、それで返してもらえるならいいかとおもって、やり返さなかったけど」
「まったく・・・」
 アルフォンスは苦笑を零した。
「だって・・・。きょうだいが離れ離れなのは辛いよ。俺も耐えらんねえ。だから、キラの気持ちもティアの気持ちも分かる」
「うん。分かってる。優しい兄さんのことだもん・・・」
 アルフォンスはそっと兄の体を抱きしめた。
「いててて。ちょお、いてえ!」
 どうやら、体のあちらこちらに痣があるようだ。
「打ち身に効く薬があるから、ちゃんと飲んでよね!」
「クスリキライ・・・」
「わがままいわない!」
 うっげ〜と大げさに嫌がるエドワードをクスリと笑って、アルフォンスは見る。
「なあ、アル」
 兄はふと表情を変えた。
「うん?」
「国家錬金術師っていったいなんだろうな。キラのオヤジみたいなやつもいれば、ほんとうに研究熱心なヤツもいる。戦争好きなやつもいれば、人の役にたつために、っていう人もいる・・・。錬金術って、人殺しの道具となるか、救いの手となるか。紙一重だな」
「そうだね。使う人によって違うからね。武器だってそうだよね。人を殺す道具だけど、でも人を守ることにも使える。錬金術は、『道具』だ。使う人が間違わなければ、人が傷つくことはない」
「ああ。頼りすぎも危険かもなー。俺も銃の練習しよっかなー」
「兄さんに銃を与えるつもりはありません。自分で撃って自分に当たりそうだから」
「てめえ・・・。俺をバカにしてるだろ」
「いいえ、とんでもございません。ただ、確率のことを申したまでです」
 兄さんに銃を与えるつもりはない。冗談まじりにそういったが、アルフォンスは事実そう思っている。
 エドワードは、国軍大佐という地位から、銃を使わないわけではない。だが、常備していない。
人を誤射してしまうのが怖い。撃つこと自体が怖い。エドワード自身、銃に対して恐れがある。接近戦を好んでするエドワードに銃は必要ないが、戦争に借り出されれば、別だろう。
「まあ、錬金術の方が得意なんだから、そっちだけでいいじゃない?」
「ああ、まあな」
 でも、エドワードの心では、国家錬金術師という地位を、深く疑問視していた。もちろん、この大佐という地位があるのは、国家錬金術師だったために、少佐からスタートしたため、出世が早かったといえよう。国家錬金術師を嫌う人間は、キラたちだけではない。大勢いるのだ。
 ふう、とため息をついてエドワードは窓の外をみた。
 もう、ずいぶんと暗くなり、星が瞬いている。
「八年か」
「え?」
「俺が国家錬金術師になってから、八年。いろいろあったよな」
「うん。でも、あの旅で兄さんが救った人々の中では、国家錬金術師に対しての見方が変わったひともいると思うよ」
「・・・・そっかな」
「それに、キラたちだってそう思ってるよ」
 窓から目をそらさない兄の肩をそっと抱くと、兄はやっと弟を見上げた。
「・・・。ま、まだ俺は軍にいるつもりだけどな」
 にかっと笑ったエドワードの顔に、ホッとしてアルフォンスも微笑む。
 人間兵器といわれようが、自分には錬金術しかない。これで、弟を守るしかないんだ。そう心でつぶやくエドワードだった。

ムリヤリオワリ;
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