リクエスト

□『貴方への手紙』
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☆☆
 ふっと目を開くと、窓からの明るい日差しが、注いでいた。
ふとベッドの横を見ると、金の髪が朝日に照らされてキラキラしている。

夜を共にするようになって、二年半。それまでは、僕はいろんな女性とも付き合ってきたけど、やっぱりこの人しかいなくて。

蕩けそうな蜂蜜色の瞳で名前を呼ぶのは、もう僕だけにして。
甘い声でいっぱい啼くのは、僕の前だけにして。
そんな独占欲でいっぱい。

「おはよ、兄さん」
こんな小さな声で、兄が起きるわけでもなく。僕は、ふふっと笑って、兄の鼻をつまんだ。
「んっ…やめろ…よ…アル…」
 まだまどろみを彷徨っているようで、寝返りをうって、僕に背を向ける兄さん。
 肩がむき出しになって、背中も素肌。
 もちろん、下も何もはいてなくて、ブランケットをとったら、何も着ていない兄の身体が丸見えだろう。

 その肩をするり、と撫でて、そっと口付け。
 肌理のこまかな肌質だけど、傷だらけの身体。
 
 この小さな、小さな身体で大きな鎧を守っていたなんて、今では笑い話になるだろうけど、必死で守ってくれていた。
 石をぶつけられたし、棒でつつかれたこともある。罵倒罵声なんてあたりまえ。汽車では、どんなに好奇な視線に晒されたか。
 
でも、僕には、僕を照らす光があったんだ。

まっすぐ前をむく鋭い視線。その背中には、フラメル。その背中を僕は見つめてきた。僕の前では泣かないようにしていたんだろう。必ず、振り向くときは苦笑を張り付かせていて。
『アル、行くぞ』
 そんな強い言葉で前を向いた。

 まだコドモと呼ばれた時期。精一杯オトナのフリをして生きてきたね。
 地獄を見てきた。
 灼熱の地獄を。
 業火に焼かれ、もがいて生きてきた。

 二度目の人体錬成を終えた直後は、兄にも笑みが戻って。
僕の回復を心より喜んでくれていた。


「んん…」
 兄が再び、こちらを向く。
「兄さん。起きて。今日は朝から会議が入ってるよ。兄さん」
「ん〜…」
 眉間に皺が寄って、ブランケットを頭までかぶろうとするので、それを阻止。
「アル〜まだ寝る〜…」
「まだ寝るじゃないの。もう朝だってば」
「ん〜…」
 …で、また寝るんでしょ。

 ようし、こうなったら。
 僕は、ブランケットを勢いよくはがして、兄の中心にそっと手を伸ばす。
「っ、アル!」
 流石に起きるだろう。
 目をぱち、っと開いて兄は僕を見上げた。

 もう、おそい。

 僕は、兄の身体を組み敷くように上にのって、その唇に軽く口付け。
 右手はまだ兄の中心に触れていて、擦りあげる。
「ちょ、やあ!アルっ!」
「だ〜め〜」
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