リクエスト

□【trust】
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声をかけられて、二人はふと窓を見た。アルフォンスの掌にのるくらいのカエルの人形が腕をくんで、こちらを見ていた。カエルといっても、顔はヒトの顔を保っていて、黒髪に流し目の男だ。
「何のようだよ。カエルのクセに、焔使いサン」
 嫌味たっぷりの言葉を、髪を水かきのついた手でかきあげることで堪えた、焔使いといわれたロイは、ぴょん、と飛んでエドワードのいる机まで飛んできた。
「私も好きでこの姿なのではないケロ!」
「オレだってそうだ!」
「それは、さておきケロ。お姫様?」
「貴様…」
 三白眼で睨みつけたエドワードと流し目でそれを返すロイの間に、アルフォンスがまあまあ、と割り込んだ。
「それで、どういった御用なんですか?マスタングさん」
「ゴホン。それでは言うケロ。あの魔法使いが一年ぶりに帰ってくるらしいケロ」
「…!」
 エドワードの目が大きく見開かれた。その目を、アルフォンスは認め、眉を顰めた。
「じゃあ…今度こそ倒してやる…!」
 金の瞳がきらり、と光を増して輝く。
「でも、兄さん…」
「なんだよ、アル!何か文句あんのか!?」
 机に昇った状態で、顔を近づけて睨みつけても、サイズがサイズなだけに迫力はないのだが、またも蹴られそうで、一瞬アルは身を引いた。
「そのサイズでどうやって戦うの?錬金術を封じられて、戦う術がないじゃない」
「なんか武器をお前が作れ。あ、でもおまえは力を使ってダメだからな!」
「…でも…」
「今度はお前が人形になっちゃうだろ…。それは絶対…ダメだから」
 急にうつむくエドワードに、アルフォンスは眉間に皺をよせて溜息をついた。
「魔法使いエンヴィーの弱点がわかればいいケロ」
 う〜ん…と一同が考え込んでいると、ふと窓の外が騒がしいのに気がついた。
「なんだ…?」
 三人、厳密にいうと一人と一つと一匹は、窓から外を覗き込んだ。

 うっすらとした夕暮れのなか、ランタンの火が右往左往している。
「何かあったのかな」
 アルフォンスがそういうと、ドンドンドン!と勢いよくドアをノックされて、エドワードとロイは一瞬にしてぱた、っと人形に戻った。
「エルリックさん!」
「はい、どうされました?」
「大変だ!村長の娘が、あの魔法使いにさらわれた!」
「ええ!?すぐ行きます!」
 アルフォンスがそういうと、村人はすぐに踵を返して、他の人々と合流していた。
「今の聞いたよね!?」
 アルフォンスがそういうと、ロイはきり、っと表情を変えて部屋を飛び出そうとした。
「ちょっと、マスタングさん!!」
「わたしがリザを助ける!」
「しかし!あなた一人では…!」
 何を言ってもロイは、行くといいはり、そのままぴょん、ぴょんと撥ねて行ってしまった。
「アル、俺たちも行こう」
「うん」
 アルフォンスは、エドワードを羽織ったジャケットのポケットに入れて、家を飛び出した。
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