リクエスト

□【trust】
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「村長の娘…リザ。貴様がオレの…」
 リザはキリリと鳶色の瞳を、黒尽くめの衣装を纏ったエンヴィーに向けていた。
「私は何も知らないわよ」
 強気な表情で言うリザに、エンヴィーはにっとわらって、すっと杖を振った。すると、一瞬にしてリザの両手足は十字のように縛られていた。
「ッ…!貴方は一体何が目的なの!?ふらりと来て、いたずらして帰って…」
 エンヴィーはに、と笑うだけだ。
「おまえがオレの弱点を知ってる限り、生かしてはおけないんだよ」
「弱点…?知らないわ、そんなの!」
 そんな中、
「魔法使いめ!リザを返すケロ!!」
 勇ましく現れたのは、――カエルのロイ。
 小さなカエルが、堂々とエンヴィーの前に立ちはだかり、指差すが、その体格差にエンヴィーは大声で笑うだけだった。
「はははは!焔使いが惨めだな〜」

 すっと瞬時に目の前に現れたエンヴィーに、ロイはたじろぐ。確かに、今の自分に敵う相手ではない。
「おまえなんか、片手でひねり潰すことができる」
 にやり、と笑ったエンヴィーは、その通りに右手でロイを握った。
「ぐッ…!」
「ロイ!」
 その様子を見ていたリザが心配そうに名を呼ぶ。その姿をちらり、とみるとリザはキュと眉を寄せてロイを見つめていた。
「…リ…ザ…」

 そこへ駆けつけたのは、アルフォンスとポケットに入ったエドワード。
「やい、エンヴィー!!」
「鋼使いとタダの人形職人じゃないか」
 
 エドワードは、キっと睨みつけてアルフォンスに言う。
「オレを投げろ」
「え!?何いってるの!」
「スキを狙ってカエルを助ける」
「そんなことできない…!」
「アル、オレはいずれ…」
「え?」
 エドワードは、一瞬うつむいてやがて顔を上げたときは笑みを浮かべていた。
 エドワードは、ちょこちょことアルフォンスの肩に昇っていき、頬に小さな小さな唇を落とすと、そのまま飛び降りて、エンヴィーのほうへ走っていく。
「ちょ、兄さんッ!?」
 
 エンヴィーもその小さな人形のエドワードに、魔法の杖を向けた。その杖の先からは、炎が飛び出し、エドワードを焼き殺そうとするのだ。
「ッ!」
 すれすれのところをうまくかわしていくので、エンヴィーはその杖で円を描くように振った。すると、今度は鋼鉄でできた柵がエドワードの体を囲ってしまったのだ。
「ッ!ちくしょう!」
「あはははは!人形やカエルじゃ僕に敵わないよ。残ったのは、非力な娘と弱虫な男」
 
 アルフォンスは、ぎゅっと拳を握った。
 
 兄は、使うなといった。
 自分の力をエンヴィーの前で使ったら、自分も人形か、カエルか、何か別のものにされる。そうして、兄とロイは姿を変えられたのだ。
相手は魔法使い。
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