リクエスト

□だって兄だもん
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 エネルとエイジは向き合って、ふたたびぷっと笑いを漏らす。
「兄と弟の性格が反対だもんな」
「准将とその小説の弟が同じ性格ですしね」
「え〜…。じゃあ、アルがやんちゃになればいいわけ?」
「それと、貴方が冷静な兄にならないと!」
「オレはいつでも冷静だっ!」
「まあ、時には冷静でしょうけど、いつでも冷静であってほしいというのが部下の願いですが…。で、つまりは、その呼び名は、兄に対する敬称ですよね。敬称ってことはそれなりに尊敬されないと…ねえ」
「そんけい…」
「尊敬されるヒトになるには、どうしたらイイかな〜エルリック准将?」
「おお」
 右手の拳を左手で受け止めて、エドワードは何かを思いついたようだ。
「じゃ、またな」
 そういって、エドワードは食堂を後にした。
「…あいつ、飯食ったのかな」
「たぶん、食べてないでしょうねぇ…」


 エドワードは、食堂からもどると早速執務室に閉じこもった。案の定、書類の山がいくつも形成されていて、その一枚をめくった。
「…予算報告書。始末書…が、うわ、多すぎ」
 しかもこの始末書、エネルじゃんか…。
 と思いつつも、エドワードはひたすら書類を捌いていった。

「どう思います?」
 大部屋から執務室に繋がる扉をコソ、っと開いて、マーカーが指差した。その指先はもちろんエドワードがいる。
「めずらしくやる気ですね」
「何かあったんでしょうか」
「さあ」
 アルフォンスも不思議に思うが、書類をやる気なときにやってもらわないと困ると思い、放っておくことに。


「うわ!」
 エドワードが、気がついた時は、すでにとっぷりと日が暮れていた。
「集中しすぎた!」
「おつかれさま」
 ふいに声がして、振り向かずとも誰かはわかる。
 弟の、アルフォンスだ。
「夕食持ってきたよ」
「それよりさあ、アル!」
「うん」
「今日、オレ書類頑張ってただろ!?」
「え…う、うん…」
 キラキラの目でそういわれて、アルフォンスは後ずさりしていくが、それを追うようにじりじりとエドワードは迫っていく。

「ど、どうしたの、兄さん」

 その言葉に、がくっと頭を垂れて、何故か凹んでいる兄に、アルフォンスの脳裏はハテナマークでいっぱいだ。
「ど、どうしたの?」
「…なんでもねぇ…」
 だめだ、これじゃあ、尊敬してもらえねぇ。
「はあ〜」
 大きく溜息をついたエドワードに、アルフォンスは何かいけないことでも言っただろうか、と心配になってきたようだ。
「ねえ、どうしたの?」
「なんでもねぇって…」
「何でもないのに、その落ち込みようは一体なんなのさ」
「だって…」
 視線を下げたエドワードの表情に、何故か悲しみのようなものが見てとれて、アルフォンスも眉を顰めた。
「兄さん?」
 しばらく俯いていた、エドワードだが、意を決して顔をきりりと上げた。

「あ、アル…!」
 その思いつめたような表情で見上げられて、アルフォンスは何を言われるんだろうと身構える。
 え、何…?
 アルフォンスの思考は、最近おかしいことなんてなかったし、家に帰ってもいつも通りだったし、浮気するなんてことも僕も兄さんもありえないし…?一体なんだろう!?とフル回転だ。
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