リクエスト

□兄さんは魔女
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「エドワード。おまえにこの魔法界の次期統治者として、一ヶ月の人間界修行に行く事を認めます」
「よっしゃっ!これで探せる!」
「ただし。魔女だということは決して知られてはいけない。知られたら、おまえには罰が下されるますよ」
「ソレ前にくらってんじゃん。はいはい。じゃ、行ってきま〜す」
「おまちなさい!エドワードまだ続きが…!」
 エドワードはくるりと踵をかえし、愛用の箒に跨って行ってしまった。


【兄さんは魔女。】


 魔女、エドワードが人間界に降り立って、一番最初に出会った人間は、自分と同じ金髪金目の高校生だった。
 緑のジャケットにチェックのボトム。エドワードは、しげしげと見つめてくるその瞳に少しだけ興味を持ってしまった。
 自分は、箒にまたがっていて、そのまま彼の前にふわり、と降り立つ。
 同時に、ミニスカートがふわり、と舞い、彼にまんまと見られていたのだが、それすら気がつかないエドワードは、頭に乗せていた大きなとんがり帽子をとった。
「おまえ、人間?」
 聞かれた男は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、エドワードを見下す。
「へっ…?」
「オレ、ここに修行に来たんだけどさ。アルケミスト学校ってのがイマイチわかんなくてさ」
「アルケミストなら、僕の学校だけど」
「マジ?連れてって」
「君、転校生?」
「ああ。エドワードって言うんだ。あ、これでも女だから」
「女?」
「んだよ疑うなよ。それより、学校連れてってくれ」
「いいけど…」
「あ、それまえに、名前は?」
「僕は、アルフォンスだよ」
「アルフォンス…?」
「うん」
 エドワードが不思議そうに顔を覗きこんだ。
「なに?」
「い、いや。なんでもねぇ」
 エドワードはそういうと、ぱんと両手を叩いて、箒と大きなとんがり帽子を消してしまった。
「わっ!」
「あっしまった」
 そういえば、人間界で魔法は見られちゃいけなかったんだ!
「あ、アルフォンス!…さんっ!このことはナイショで!」
「君、魔女なの?」
「えっ…人間に決まってるだろ」
「だって、飛んで現れたし、今箒と帽子を消しちゃったし、それに僕のこと人間って聞くなんて、君が人間じゃないって言っているようなもんだよ?」
「あちゃ〜そうだった…。ナイショな!オレ修行中の身だからさ、おまえがナイショにしてくれれば、丸く収まるんだよ。たのむっ!」
 懇願してくるので、アルフォンスは、苦笑して、
「いいけどさ。ちょっと、演技してくれない?」
「へ?」
 不思議そうに首をかしげるエドワードとは反対に、アルフォンスはにっこりと笑顔だった。


 アルフォンスと並んでアルケミスト学園の門をくぐった。そして、教室に向かうのかと思いきや、彼が連れてきたところは、体育館の裏。
「な、なんだよ、こんなトコに連れ出して…」
「し」
 アルフォンスと二人で待っていると、一人の女性がやってきた。ここの生徒らしく、同じ制服を着ている。
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