宝物(小説)

□花びら詣で
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近所の神社は大晦日から元旦の夜にはそこそこ込み合うものの、2日目ともなると、人もかなり疎らになっていた。
 お参りをすませて、屋台に出てた甘酒を買って飲む。
 熱いのか、ふーふー冷ましながら飲むエドワードの赤い唇に、アルフォンスは不埒な想像をする。
 白い紙コップに口を寄せるときにチラリと見える舌と、縁につける唇。嚥下する喉の動きと、紙コップを離したときに僅かについた口の端の白濁の酒。
 兄を見て、甘酒の熱ではない熱さを、口の中に感じる。
「どうした?」
 自分を見つめる弟に尋ねる。
 寒い中で温かいものを飲んだため、ほんのり潤ませた目で頬も赤くして、アルフォンスを見ていた。
「兄さん!」
「ん?…わあっ」
 手をぐいぐい引っ張って、神社の人気のない裏へと誘った。
 甘酒の香りが残る唇に、噛みつくように自分のものを合わせる。
 薄く開かれた唇の隙間から舌を滑りこませ、エドワードの舌を絡めとり蹂躙する。
 歯列の裏をなぞり舌を軽く噛んだり、口腔を余すことなく侵していった。
「な…に、急に…」
「…ごめん、ちょっとだけ…」
「え?ここでか?」
 物事色事には少々のことでは動じないエドワードでも、近所の神社の裏ともなるとさすがに動揺する。
「大丈夫だよ。人なんて、こっちまで来ないし。ね?ちょっとだけ…」
「んー…ま、いいけど…着物、崩さないでくれよ?」
 弟の頼みには弱く、肌を合わせることも嫌いではない(むしろ好き)エドワードが、あっさり承知したのは当然のことだろう。
 再び唇を合わせ、背中から尻へ何度も手を這わせる。
 揉むように尻を撫でていたかと思うて、指を狭間に食い込ませてきた。
 前の中心も、着物ごしとはいっても、アルフォンスの脚で刺激されて、膨れてくる。
「ん…ふっ…」
 苦しそうに呻きながら、アルフォンスの広い背中に腕を回してきた。
 より深く舌を絡めあう。
 力が抜けていくエドワードの腰を支えてなお、唇の甘さに酔う。
 甘酒などとは比べものにならないくらい甘く、どんな酒よりもアルフォンスを酔わせる。
 名残惜しげに唇を離して、エドワードの額の髪を払いキスする。
 ぼんやりとアルフォンスを見つめる瞳には、官能の色が宿っていた。
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