toy ring

□toy ring 2
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「アルフォンス、リザさんとの共演が決まったぞ。プロデューサーは…」
「マスタングさんでしょ」
「うん…なんで分かったんだ?」
 出番待ちに台本を呼んでいたアルフォンスが、ふとエドワードを見た。
「マスタングさんから直々に連絡をもらったんで」
「おまえら、ケータイ番号交換してたの?」
「…まあ、いろいろあってね」
「それでさ、やめたかったら、辞めてもいいんだぞ?」
「え?どうしたの珍しい」
「あ、いや…そのさ」
 兄が目を泳がすので、アルフォンスは不思議に思う。
「何かあったの?」
「い、いや…その。台本もらったんだけどさ…」
 エドワードがおず、っと出した台本をアルフォンスは奪うように引き取り、そして中身を読み始めた。
「何、僕リザさんの恋人役?しかも初っ端から、ベッドシーン…」
「そこから入るんだって…今回のドラマ。昼ドラみたいだからイヤだな、と思ったんだけどさ…」
「…イヤなのはソコ?」
「っ…」
 アルフォンスに、すっと目を細められて、エドワードはその視線から逃れる術を知らない。目をそらしながら、赤面するとアルフォンスがくすり、と笑った。
「初めてのベッドシーンだから?」
「アルの…イメージじゃないかなって…」
「ホントにそれが理由?」
 ふいに頬に手を置かれて、エドワードは赤面した。
「っ、おまえ、いじわるッ!」
「クス、だって言ってくれないんだもん」
 エドワードは口を尖らせて、だけどきりっと表情を引き締めた。
「この仕事請けるって言ってくる!」
 つん、っと金のテールをなびかせて、エドワードは控え室を出ていった。
「え、ちょっと、兄さん!?」
 怒らせた…かな?
アルフォンスは後頭部を掻いた。


 なんだよ、アルのヤツ!オレにばっかり、言わせようとして!自分の方が余裕ある顔して…。なんで…オレばっかり!
…でも、仕方ないんだよな。
 オレとアルフォンスの思いの大きさは違う。
 …あいつは、手馴れてるというか、余裕がある。俺は、いつでも必死にしがみつく。そうするしか自分は生きられない。

  エドワードはぎゅっと首に下げている指輪を服の上から握りしめた。そこには、このまえもらった銀の指輪と、幼いころにもらったおもちゃの指輪がぶら下がっている。
「…仕事だから仕方ないよな」
 たとえ、キスシーンでも、ベッドシーンでもそれは仕方ないんだ。仕事だから。

「ねえキミ、エルリックさん?」
「え、はい」
「やっぱり!アルフォンスのマネージャーのエドワード…サンだよね」
「はい…そうですけど。あなたは?」
「あ、オレ?エンヴィっていう、カメラマンなんだけど。君さ、このまえ雑誌にアルフォンスと一緒に写ってたよね?」
「…あ、ええ」
 自分が写っている雑誌は、一本しかない。確か、先月発売だったかな…。そう思っていると、エンヴィという名の男はにこ、っと笑ってなれなれしくエドワードの肩を抱いた。
「君をさ、モデルとして使いたいといったら、君は困るのかな?」
「…は?オレ、モデルっていっても…」
「あ〜いいのいいの。身長は関係ないから」
「それってオレが低いっていってんの!?」
「実際そうだろ」
 ぷち、っと何かが切れる音がした。エドワードは、その肩を抱く手を払うように叩き、しゅっと右の拳をエンヴィに打ちつけようとしたが、すっと流されてしまった。
「おおっと、手が早いんだからよ。ま、そんなトコもギャップがあってカワイイんだけど。今日の夜、『Fullmetal』っていうバーでまってる。ああ、そうそう。断ることなんてできないよ」
「なんだと?」
「おまえのカワイイ弟くん、もうすぐ舞台始まるんだってね。穴があいたら困るよね」
「おまえ…」
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