toy ring

□toy ring冬企画1
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A toy ring『冬のイベント』

「よし、オッケー」
 カメラマンのエンヴィーからのオッケーがでたら、撮影は終了だ。今日は、クリスマス向けの一冊になるようで、エドワードの衣装もぬくぬくとしたあたたかなものばかりだった。
 小道具のケーキは撮影中に食べたりして、今日はちょっと楽しかったと思いつつも、エドワードは衣装担当のラストに尋ねた。
「なあ、この衣装ってさ、買い取るわけにはいかないかな〜」
「え?全部?」
「うん。この髪飾りから、パンプスまで」
「え。いいけど、貴方の嫌いな女装じゃない」
「いや、そうなんだけど…」
 すっと視線を下げて、微かに赤面したエドワードに、ラストはくすり、と口角を吊り上げて微笑んだ。
「いいわよ」
「さんきゅ!」
 ぱっと明るく笑ったエドワードの表情を、ふいに写真にとられて、エドワードは横にいたエンヴィーを睨んだ。
「おい、撮影は終わったんだろ」
「いや、つい」
 ついじゃねえよ、と思いつつ、エドワードは着替えるために更衣室へ引き上げた。

 いそいそと買い取った衣装を丁寧に片付けると、傍らでラストがからかうように声をかけた。
「誰かにプレゼントでもするの?」
「オレが着た中古を誰がプレゼントするか」
「でも、それさ、オール一点ものよ?それ着て歩いたら、一発であなたが『ed』だってばれちゃうわよ」
「一点ものだなんてわかんないからいいって。大丈夫」
「ふう〜ん?やっぱ自分で着るんだ」
「あっ!」
 きゅうに真っ赤になったエドワードに、ナイショだからな!と苦し紛れに吐き捨てて、エドワードは撮影所を後にした。
「くす」
「何笑ってんだよ、ラスト」
「ああいうアイジョウもあるのかしらね、ってことかな」
「はあ?」
 

 十二月も中旬になり、一掃冷え込むことが多くなった。この辺りじゃそうそう雪なんて降る事はないが、すこし期待してしまいそうな日々が続く。
そんなある日、エドワードはリビングでしばらく硬直してうごけない。
「どうしたの?兄さん」
 携帯電話を耳にしたまま、手帳を開いて硬直しているので、弟のアルフォンスが心配そうに顔を覗き込んだ。
「…くそお…」
「どうしたの?」
「折角おまえのスケジュール、24日空けといたのに!!」
「あ、仕事が入ったの?」
「おまえんじゃない!オレの撮影が入った!しかもエンヴィのやろう、自分勝手なんだぜ!?一月からニューヨークにしばらく滞在するから、溜め撮りするって!スケジュールがないから、24日にスタジオに来いって…」
 がく、とうな垂れた兄にどう声をかけたらいいかわからず、アルフォンスは苦笑を張り付かせた。
「ま、しかたないんじゃない?」
「し、仕方ない!?だって、約束したじゃん!今年は、ちゃんとデートしようって…」
「んーでもさ、やっぱり、仕方ないと思うよ?だって、仕事だからおろそかにしちゃいけないよ」
「…そう…だけど…。おまえ、ちゃんとレストラン予約してくれてたのに…」
「早く終わったら行けるよ」
「早く終わる保証がない…」
 アルフォンスは悲しげにうつむく兄に、やはりかわいいと思ってしまう。だから、アルフォンスはふわり、と微笑んだ。
「うん、僕も残念だとおもうよ」
「おまえ、ぜんぜん残念そうじゃないもん…」
「そんなことないよ。でもね、そうやって兄さんが落ち込んでくれてる方が嬉しいかも」
「え、何でだよ」
「だって、そんなに楽しみにしてくれてたなんて思わなかったから」
 目元に朱が入ったエドワードの頬にそっと触れた。
「それだけで十分。だって、兄さん。僕たちの24日は今年だけじゃないんだもん」
「…アル…」
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