toy ring

□toy ring 8
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A toy ring8

「ねえ兄さん、この服あげるからさ、着てみてくれない?」
 朝、エドワードが『ed』としての撮影に行く前、アルフォンスが差し出した服。
「え…うん、いいけど?」

 簡単に承諾して、その服に着替え、エドワードは「いってきま〜す」といって外へ飛び出した。

「お、なんだよめずらしい格好して」
「へ?」
 撮影所に行くなり、エンヴィーにそう言われて、エドワードは目を丸くする。
「あら、貴方にしてはおしゃれなの着てるわね」
 ラストにさえそういわれて、エドワードは自分の衣装をまじまじと見た。
「…そうか?」
「どこのブランドなの?」
「え、知らない。アルがあげるから、着てみてって言うから」
「へえ…」
 エンヴィーもラストも興味深々で、エドワードが衣装に着替えたあともその服をまじまじと見ていた。
「そんなにいいもの?」
「仕立てもいいし、布もいい。あと、おまえにすっごく似合ってるな」
「そうそう、サイズもぴったりだし、貴方の身体を知り尽くしてるって感じに魅せるわね」
「…へ?そうか?」
 よくわからないことを褒められて、エドワードの脳裏にはハテナマークがたくさん並んだ。
「それより、撮影しないの?」
「あ、忘れてた」
「おいおい、それメインだろッ!」

 エドワードの衣装は、背中がお尻の手前まで大きくあいた柔らかな服だった。どうやら、今日の撮影は衣装がメインというより、アクセサリーが中心のようだ。

 中央に座って、カメラマンには背中を見せ、横向きで左手に女性ものの時計を持つ。髪を結い上げられているので、耳にはイヤリングがつけられていた。
「なんで、アクセサリーメインなのに、背中が開いてるわけ?」
「なんとなく」
 ラストの言葉に不満げな表情を出すと、エンヴィーに「顔作れ!」と叱られた。
「次は、横になって、アンクレット」

 右ひじで身体をささえ、背中はカメラマンを向けた状態で、足をすこし伸ばした。
「冷たっ」
 アンクレットがひやり、と足首にまかれてエドワードは冷たさに震えた。
「それ、安いように見えるけど、一千万するから」
「ええ!?」
 エンヴィーにそういわれて、エドワードの体は硬直した。
「身体も表情も硬いぞ」
「だったら、値段とか言うな!」
 エドワードがそういうと、ラストがクスクスと笑い、「今回、高いの多いのよ」なんて付け加える。
「髪下ろすか」
 エンヴィーの一声で、結い上げられていた髪を下ろされて、ちょっと悲しい表情で一枚撮られる。
「あ〜おまえに乳が欲しいとこだな」
「うるさいっ!だったら女使え!」
「ごもっとも」

 そんな相変わらずな撮影を終えて、マンションに着いたのは、午後七時を過ぎていた。タクシーからマンションに入ろうとすると、まっすぐまえから、アルフォンスらしき長身の男が歩いている。その横には、褐色の色をした肌の女性。
「…アル」
「兄さん!おかえり。どうだった」
「え、うん、まあ」
 いや、それよりその人誰?それに、女性と歩いていたら週刊誌に写真撮られちゃうだろ、と言いたかったが、アルフォンスはにこにこの笑顔で、女性とそしてエドワードを促してマンションに入っていく。
「アル、その人…」
 エレベーター内でそう尋ねると、
「彼女は、ロゼ・トーマス。服飾デザイナーだよ」
「初めまして、貴方がエドワードさん?」
「ああ、兄のエドワードです」
「よろしく」
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