toy ring

□toy ring 冬企画3
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【姫と背中】

「はあ?年末年始なんて遊んでるヒマないぞ。おまえも忙しいんだろ!?」
『忙しいから少しの合間で行こうっていってるの。二日の夜だったら、時間空くんでしょう』
「まあ、二日の夜なら予定はないけど…」
『アルフォンスも『ed』としてもないんでしょ?』
「…ま、まあ…」
『なんでもお見通しよ、ウィンリィちゃんは!じゃ、二日の夜にね』
 一方的な電話を、やはり一方的に切られ、エドワードは溜息をついて携帯電話を下ろした。
「どうしたの?」
 撮影が終わったのか、アルフォンスが廊下に出て話をしていたエドワードの顔を覗き込んだ。
「ウィンリィだよ。二日の夜にウチに来て、だってよ。そんでもって、初詣に行こうって」
「はは、ウィンリィってアソビの天才だよね」
「確かに。ま、断れない俺たちもどうかと思うけど、まあ仕方ないか」
「だね」
 そんな会話を済ませると、「アルフォンスさん、お願いします」と声をかけられた。
「アル、まだあるって」
「はいはーい」

 今日は、雑誌インタビュー三社と撮影。にこ、っと笑った顔を撮った写真はよくあるが、ふわり、と包み込むような笑顔を向けるのは、自分にだけ、という自負している。それが、本当の笑顔だということも。
 もちろん、怒った顔も、演技意外では自分にしかみせないだろう。

「さてと、次は…」

 分刻みで組まれるスケジュールの中、大晦日の生番組に出演、またぐように新年になり、新年早々、アルフォンスの顔は全国に流れる。
「あけましておめでとうございます」
 という挨拶をするとアップにされて、今年も人気のよさを表しているようだ。そんなアルフォンスに満足して、エドワードは微かに笑みを浮かべた。

 終わったのは午前二時、車での睡眠をとり、アルフォンスはすぐに違う局へむかった。疲れても顔に出さないので、スタッフはいつも「すごいですね」と声をかけられるエドワード。でも、かなりキツイ時は顔に出して欲しいと思う…。それが出来ない弟だから、自分がここにいるのだが。

 仕事が急ピッチに終わっていき、二日の午後から明日の朝まで休みがとれ、二人は自宅に帰ることができた。
「何か食うか?」
「ううん。さっきお弁当食べたから」
「だったら、寝て来い。もし辛いんだったら、ウィンリィとの約束は断っておくから」
 何故か、アルフォンスはふっと口角を吊り上げている。
「なんだよ?」
「ん〜楽しみにしてるんだから、そんなこと言わないで」
「え?あ、そうなんだ。初詣っておまえそんなスキだったわけ?」
「う〜ん、まあね」
 なんて、それが楽しみなんじゃないけど。ウィンリィだってね、ヘア・メイクさんなんだよね〜…とは言わないが。

 数時間の仮眠をとって、二人は仕方なくウィンリィのマンションを訪れた。
「いらしゃい♪」
 勢いにのまれるように引き込まれた二人。
「エドはこっちに来て。アルはお茶を淹れること」
「え?」
 戸惑うエドワードにアルフォンスは、「はいはい」と勝手知ったるウィンリィの部屋のキッチンに立った。

 ぐいぐいと押されてウィンリィの寝室らしき部屋に連れてこられて、用意されていたのは、黒地に華やかな色合いだがシンプルな花柄の着物。
「カワイイでしょ?」
「…これ、デザイナー『shin』の…着物」
「そ!さすが現役モデル。御目が高い!」
「って、どうしたんだよ」
「ま、細かいことは無しにして、さて着ましょうか」
「…やっぱり」
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