toy ring

□toy ring 9
1ページ/8ページ

「ええ!?俺が、男役?」
 珍しい依頼に、エドワードは目を丸くした。場所は、エドワードが『ed』としての撮影を行うスタジオ。しかも、相手がいるというのだ。
「そう。相手は、女優のリザだ」
「うは、リザさん…。ってことは、俺の正体が彼女にバレるってことか?」
 エンヴィーはにやり、と笑って
「マスタングプロデューサーがCM撮るんだってよ。その相手役がおまえ。そして、『toy』でも、広告を作ることになったんだ」
「何の広告?」
「口紅。資帝堂のな」
「…ふうん。で、まさか、そのCMに俺が出るの?」
「あれ?依頼来てないのか?」
 きてねぇ、と憮然とした表情で答えると、アルフォンスが、スタジオに「ごめん、遅くなった」と飛び込んできた。
「アル」
 アルフォンスとロゼが駆け込み、その後ろに、女優リザとロイが並んで入る。
「うわ…」
 ドラマの撮影でしかリザとあっていないエドは、その女優ならではの輝きに圧倒され、しばしその姿を見るしかなかった。
「兄さん、これ、今回の衣装だよ。光沢のある素材にしようか、迷ったけど結局落ち着いた生成りにしたよ」
「は?何の話?」
「あれ?言ってなかったっけ?今日、リザさんとルージュのCMページで、その男性役をやるって聞いて…ないんだね。その顔」
「今聞いた!大体、男性役ってなんだよ、オレはもともと男だ」
 あれ、機嫌悪い、とアルフォンスは苦笑した。
「いいから、準備してこい」
 エンヴィーに背中を押され、エドワードはしぶしぶ準備にとりかかった。
「リザさんは、こっちの部屋を使って」
 ラストに促されて、リザも部屋に入る。

「タキシード?」
「うん、一応」
 アルフォンスが着替えを手伝い、最後にとりだしたのが、
「じゃ〜ん、シークレットシューズ」
 エドワードがそれに足を入れると、エドワードの目がきらり、と光った。
「わ〜すげ〜〜!俺、背が高いっ!!」
 アルフォンスを立たせて自分も横に並ぶと、ほぼ同じ目線だ。
「すげ〜これ欲しい〜!!」
 はしゃぐエドワードに、アルフォンスは苦笑を零して、メイクをしてもらうために、ラストがいる部屋へ促した。

「みろよ、ラスト!おまえの身長と同じっ!」
「なに喜んでるのよ。リザとあわせるためでしょ。リザのほうが背が高いんだから」
 口を尖らせたまま、メイクをされる。
「だいたい、20センチ近く高い靴なんてしょっちゅう履いてるでしょ」
「ハイヒールなんて、ぐらぐらするし、歩き辛い」
「でも、足はキレイに見えるのよ」
「いいの。キレイに見えなくても」
「あ〜らそう」
 メイクが終わると、リザとともに撮影場所に入る。すると、先ほどまでなかったのだが、ピンク系の花がたくさんあって、しかも白いグランドピアノが中央においてあった。
「いつの間に」

「リザは、ピアノに座って。エドはその横で肘つく感じで」
 リザは、薄いピンクのオーガンジーがたくさん使われたドレスを纏い、ピアノの椅子に腰掛けた。その横に、エドワードは肘を突いて立つ。
「こんな感じ?」
 広告するための、口紅をエドワードに渡されて、
「誘うように、口紅を塗ってやるんだ」
「さ、誘うように!?」
 女として、そういう表情をしたことはある。だけど、男としてそんなことしたことがない。一気にパニックに陥った表情のエドワードに、アルフォンスはくす、っと笑みをこぼした。同時に、ロイも。
「笑うな…」
 赤面してしまったので、一旦撮影を止める。アルフォンスがエドワードの横につかつかと歩み寄ってきた。
「こんな感じにしたら?リザさん、ごめんね」
 そう一言言うと、アルフォンスはエドワードの持っていた口紅をとり、リザの唇に近づける。アルフォンスの表情は、少しだけ伏せ目がちで、口は半開き。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ