toy ring

□toy ring特別企画リクエスト8
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【愛情の定義】

テレビが一人でしゃべっている。
その真正面で、エドワードはソファに座って冷めた目でみていた。内容は、『アルフォンス、『ed』と同棲!?』とタイトルに書かれコメンテーターが結婚は今年中か!?なんて言っている。
「はっ、生まれたときから同姓だよ。結婚できねーよ」
 と一人で愚痴をこぼし、そもそもどこからの情報だよ、と思う。
「何、一人で怒ってるの?」
 ふいに後ろから声をかけられて、エドワードは振り向きもせず、テレビを見たままだ。
「……」
「また、[お父さんのためのワイドショー]見てるの?」
「違う、これは朝の録画」
「…なに怒ってるの?」
「怒ってないけどさ、この情報どこからきてんのかとおもって」
 アルフォンスもテレビに目を移す。
「ああ。ホントだね。まさか、誰かに見られたとか?」
「だって、俺、『ed』で家に帰ったことないし」
「一度、だけあるよね。着物で帰ったこと」
「ああ、ウィンリィとの初詣?」
「うん」
「でも、あれからけっこう経ってるじゃん」
「そうだけど…」

 ふと、アルフォンスの携帯電話が鳴った。
「非通知だ」
「え?」
 アルフォンスが出るが、相手は一向に喋ろうとしない。そして、ぷつん、と切れるのだ。
「…まただ」
「最近多いのか?」
「うん。無言電話がね」
「…携帯代えるか?」
「そうだね。時間があれば」
「あ、でもさ、今度携帯会社との契約があるから、そこにするときに変えたほうがいいかも」
「ああ、そうだね」
 次回のCMは、携帯電話なのだ。

「情報源を探ってみよっと」
 そういうと、エドワードはテレビをオフにして、立ち上がった。
「寝るけど、おまえは」
「寝るよ〜もちろん」
「今日は、やらねーぞ」
「えッ!なんでっ!」
「おまえ、明日着替えのシーンあるだろ〜」
「兄さんが傷つけなきゃイイのに」
「それに自信がないからだろっ」
 真っ赤になったエドワードは、足早に寝室に入っていく。
「じゃあさ、ずっと手つないでいようよ」
「ヤダ」
「どうして?」
「…お前を抱きしめられないなら、そんなの意味がない」
「さらっと嬉しいこと言ってくれるね」
「…台詞」
 そんな台詞なかったよ、とアルフォンスは毛布に包まったエドワードの額に口づけを落とした。
「そんな目で見つめられてさ、僕が止められると思ってるのかな」
 ちょっと何かを訴えるような、潤んだ瞳を上目にして、見つめられて、アルフォンスはそっとエドワードの頬に手を置き、こめかみから髪をすくう。
 アルフォンスに髪を触れられるのが好きなエドワードは、そのまま目を閉じて、彼の指先を感じると、やがて、くす、っと笑い声が聞こえた。
「なでられたネコみたいだね」
「だれが、ネコだ」
「兄さんしかいないでしょ」
 ベッドの明かりだけにされて、アルフォンスの優しい唇が下りてきた。



「ねえ、最近撮影ないね」
 だるい身体をうつ伏せにして、その言葉を聞く。乱れた髪をアルフォンスが整えてくれて、やっと彼の顔が見えた。
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