toy ring
□toy ring 小話
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「とあるトーク番組で、自宅をビデオで撮ることになったんだ」
アルフォンスが、にっこり笑顔で小型ビデオカメラを向けている。
「…今撮ってんの!?」
飲んでいたコーヒーを思わず噴出しそうになったエドワードは、目を丸くしてカメラのレンズを見ていた。
「うん」
「ばか、やめろ」
そういうと、エドワードはビデオカメラをぐいっと右に押した。
「はい、兄でした〜」
とヒトリゴトを呟いて、そのままシゴト部屋のほうへ歩いていくアルフォンス。
「…うわ、マジで撮ってやがった」
まあ、カットされるだろうけどな。
なにやらヒトリゴトをいいながら、ビデオをとり、寝室は流石に撮らなかったが、ふたたびリビングに戻ってくる。
一旦、テープを回すのを止めて、アルフォンスは
「兄さん、ビデオまわして?」
「うん」
と、ビデオカメラを渡す。
「何撮るの?」
「なんか日常を撮ってほしいような話だったから適当に撮って」
「うん」
エドワードは黙って、ビデオカメラを回す。アルフォンスはカメラ目線だ。
「今から、ケーキ作りにチャレンジします」
「え」
思わず声を出してしまったエドワード。
「何、びっくりした?」
くす、っと笑ったアルフォンス。
「今日は、実はとある記念日なので、チャレンジしようとおもいま〜す」
記念日?エドワードはカメラを回しながらも、不思議に思う。
「ええっと、まず…卵を…。あれ?何処にあるの?」
「うえうえ」
「あ、あったあった」
冷蔵庫から卵を取り出し、たくさんの材料を取り出した。対面式キッチンなので、アルフォンスの表情がしかりと撮れる。
「わ」
ばふ、っと白い粉が舞い、エドワードは思わず笑った。
「あはは」
「今の撮った?」
「うん」
アルフォンスは苦笑を零して、続ける。
「ホントに大丈夫か〜?」
「大丈夫大丈夫」
なんていって、アルフォンスはケーキ作りを進めていく。はらはらしながらカメラを回しているエドワード。
スポンジが焼きあがると、
「「わ〜!」」
と思わず、アルフォンスとエドワードの声が重なった。
「兄さんまで驚かないでよ〜」
と笑いながらカメラを見る。
「わりぃ。だって、ちゃんと膨らむなんて思ってなかったから」
「それ、酷い」
笑いながら、アルフォンスはスポンジを置いた。
「冷めるまで待ちま〜す」
カメラ目線でそういうと、一度スイッチを切るエドワード。
「事務所NGだったらどうすんだ、コレ」
「大丈夫、適当に編集してくれるっていってたし」
「そっか」
エドワードが雑誌をみつつ、なにやら自分のモデルとしての仕事のメモをしていると、ぴぴ、っと機械音がしたので顔を向けた。
「わ、何撮ってんだよ」
「なんとなく」
「もう、ケーキ冷めたんじゃないか?」
そういいつつ、ビデオカメラをアルフォンスから横取りして、エドワードがアルフォンスを撮り始める。
「クリームはどうすんの?」
「ちゃんと生クリーム作ったよ。イチゴもあるし」
ケーキに生クリームを塗る姿を撮るエドワード。
真剣なアルフォンスの表情に、エドワードは微かに笑みを引いた。