toy ring
□toy ring番外編
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「アル!くれぐれもケガはするなよっ!」
「わかってます」
「でも心配なんだよ。初めてじゃん、爆破なんて…」
アルフォンスは苦笑して、マネージャーでもあるエドワードを見る。
「仕方ないわよね、エドワードくんの心配も」
くす、とやさしい笑みを浮かべて、女優リザが話かけた。
「おはようございます、リザさん」
「おはよう。今日も頑張りましょ」
今日はワンクールの刑事ものドラマを撮影するようになっていた。今日で第五話目。
リザは、ベージュのスーツを着ていて、アルフォンスも濃紺のスーツを着こなしている。
リザの役は、若い刑事アルフォンスの先輩刑事。事件を追っていきつつも、つかず離れずの二人の関係が恋に発展するのか、変わらないのか、といったどきどきした展開が受けている作品だ。
「リザ、スタンバイしろって、監督が」
「げっ!マスタング!」
反射的に嫌な顔をしたエドワードに口角を吊り上げた、ロイ。
「小さくて見えなかったぞ、エドワード」
「はっ、無能プロデューサーに言われたくないね。って、なんでここにいるんだよ」
「この監督とは、昔からの知り合いでね」
「あっそ」
「今日は、リザをおおいに守ってくれたまえ、アルフォンス。はははっ」
「けっ」
「なあんて、昼は言っていたのに、どうしたの?今日は甘えんぼね」
ソファに座っていたリザの膝に、ネコのようにすりつくロイ。その首筋に整えられた爪を這わせた。
「私が、ヤキモチを妬かないとでも?」
「あら、共演者に?それも、アルフォンスくんでしょ?」
リザはくす、っと笑う。
「貴方が可愛がっている数少ない俳優じゃないの。『ed』くん同様。それに、ありえないわよ、貴方がいるもの」
する、っと唇を撫でると、ロイは口を尖らせた。そんな子供っぽい仕草に、リザは再び笑みを引いた。
「もう」
その尖らせた唇に、リザが唇を寄せると、満足そうにロイは笑う。
ロイの指先が、リザのこめかみから髪を掬う。さらり、と落ちる髪を眩しそうに目を細めて、ロイは起き上がった。
改めて向き合って、彼女の頬に手を置くと、ふわり、と微笑む。
「明日は昼まで寝ていられるな」
「あら、どうして、私のスケジュールを知ってるのかしら」
「わたしは君のプライベートのマネージャーだ」
「くす、でも私は何も言ってませんけど」
「でも、今日のお泊りを許してくれたではないか」
「…そうね。でも、アトはつけちゃダメよ。明後日は、シャワーシーンがあるんだから」
「なに!?聞いてないぞ!?」
「仕事ですもの」
「まさか、あの刑事ドラマか?」
「ええ」
「な、まさか!アルフォンスに見られるとか、そんなんじゃないだろうな!」
「くす、そんな貴方が思ってるような安いラブコメじゃないわ」
リザがくすくすと笑うが、ロイは気が気ではない。
「ど、どんなシーンなんだっ!」
「女刑事が犯人に標的にされて、シャワー浴びているときに襲われるの。あ、でも、それをアルフォンスくんが助けるから、まあ、似たようなものかしら」
「かしら、じゃないぞ!アルフォンスに見られるじゃないか!」
何故か必死なロイに、リザはあきれた溜息をつく。
「もう、さっきの会話に戻ってしまうわ、ロイ。アルフォンスくんとはお芝居でしょ。彼は私なんかに、見向きもしてくれないわよ。もちろん、私だって、見向きもしないわよ?」
ちゅ、とリザから額に口づけされて、ロイはにへら、と笑う。
「だったら、シャワーシーンの練習をしなくてはいけないな」
「えっ!?」
ひょい、っと抱き上げられて、リザは目を丸くした。
「ちょっと、ロイ!?」