よみもの アルエド(未来軍部)2

□悲しみと喜びの狭間で(前編)
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前編

 ・・・とある通報がはいった。
イーストシティの隣町、町といっても長閑な田園が広がる地域で、そこにある炭坑入り口跡に、テロリストらしき人物が潜伏しているという情報だった。
もう、使われていない炭坑へ続く入り口で、洞窟のようになっているのだという。以前、同じような情報で行ってみたが、収穫がなかったということもあり、東方司令部司令官エドワード・エルリックはどれだけの人数を配置したらいいか迷った。
近頃はテロ活動もほとんどなく、だが嵐の前の静けさだ、という意見もあるため、慎重にならざるを得ない。
「僕の隊を連れて行ってきます」
 迷っていたエドワードだったが、弟でもあり副官のアルフォンスの一言でじゃあ、と決めたが、念のためにリーン・エイジ少佐の隊も連れて行くように命じた。
 エイジも、快く引き受けて出発したのだった。
それは、午後のこと。


負傷者、三名中、一人、重体。


その報告を、エドワードは身体が引き裂かれる思いで事実と受け止めたのだった。


負傷したのは、下仕官二人と、東方司令部副官、アルフォンス・エルリックだったのだ。しかも、重体だと報告され、その電話を受けたエドワードは崩れ落ちる。報告しているエイジも半泣きの状態だった。
『すみません、私が…私を庇って、中佐は…!』
 そんな電話の声も届かない。言葉が出ないのだ。
『イースト病院に運ばれた!エド、聞いてるか!?』
 エイジの直属の部下であり、エドワードの親友でもあるエネル大尉が電話をとるが、エドワードはすでに受話器を手から落としていた。
「た、大佐!」
 ガネットが、呆然としているエドワードを支える。ローズがその受話器をとって、何かを伝え、そのまま通話を切る。
「ガ、がネット少尉…」
「はい」
「すまないが…病院に…」
「はい!」
 当然です、といわんばかりの強さで、ガネットは返事をした。


 手術中、という文字をただ呆然と見つめるエドワード。

いったい、何が起こったというのだろう?
アルフォンスが重体?
なぜ?

手術室のまえで、座ることなく立ちすくんだエドワードの背を見つけたのは、駆けてきたエネルとエイジだった。
軍服も、顔もすべてが土で汚れている。
「エド」
 ふと、エドワードがふりかえる。
「ああ、ご苦労さん」
 労いの言葉をかけるその声に、きつく眉根に皺をよせるエネルとエイジ。
「申し訳…ありませんでした」
 エイジはひたすら謝り続けるが、エイジの所為ではないことぐらいエドワードは察しがつく。
 ぽろぽろと流れるエイジの涙に、
 ああ、悲しいんだ、と抑揚なく心に言葉が浮かぶ。

自分は?
悲しい…?いや、違う。
なんだろう、
わからない。

「詳しい報告を、聞いていいかな」
 エドワードは、ぎこちない笑顔を二人にむけた。
「はい、」
「いや、俺が話そう。潜伏していたのは、テロリストではなく前科三犯の殺人容疑の男だった。軍が乗り込んであわてた男は、エイジに発砲したが、当たらず上の岩盤を崩した。古い洞窟だったんで、脆くなっていたんだろうな。エイジが下敷きになりそうだったんで、アルが押し出した。そして、アルはその岩盤の下敷きになったんだが、とっさに錬金術でその岩盤を粉々にしたんだ。だが、間に合ったものと、間に合わなかったものがあって、その頭くらいの大きさの岩がアルに…」
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