よみもの アルエド(未来軍部)2

□星の降る夜に
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 星の降る夜、貴方がそっと泣いたのを知っている。
リゼンブールの星は、零れ落ちそうにキラキラ輝いて、いつも、僕たちを見下ろして、それを僕たちは見上げていた。
 そんないつもの夜。
 貴方は小さな猫を抱きしめて、僕に知られないように泣いたんだよね。

 ここからは、そんな星たちを見ることはできないけれど。

「あ・る・ふぉ・ん・す〜」
 変な節をつけて名を呼ぶのは、僕の兄、エドワード・エルリックだ。
「なに?」
 兄は、へへ〜と笑うと「ただ呼んだだけ〜」っといって、ふたたびソファに寝転がる。
「もう。僕は忙しいの!手伝ってくれるなら文句は言わないけどね」
 今日、僕は休暇だ。兄は夜勤明けで、昼からは休みとなる。東方司令部は一ヶ月に二回程度にまわってくるこの日、つまりは司令官と副官の二人がいないとき、仕事が溜まるが静かだという。もちろん、僕たちがいなくて大変なのは、直属の部下であるガネット少尉と、ローズ中尉。部下が少ないお陰で、司令官と副官がそろっていないことがあるのはいけない。ということで、部下を配属するようにとの声もあるのだが、兄は、ウンとはいわなかった。 何故かはわからないけど。
 それで、僕は午前中から掃除でバタバタしていて、兄は午後から帰ってくるなりゴロンとソファで昼寝。

 まあ、わかってるんだけどね。
 構ってほしいんでしょう?兄さん。

「ア〜ル〜アルアルアルアル」
「だ〜か〜ら〜!」
 振り向いたが、兄は僕をみていなかった。兄の視線の先には、金色に光る小さな猫。窓からひょい、と覗き込んでいたのだった。
「わ〜カワイイ。捨て猫かな?」
 僕は思わず抱きあげると、
「コラ!俺がそのアルと遊んでいたんだぞ」
「ねえ、もしかして…この猫にアルってつけたの?」
「うん。そうだよ〜な〜アル」
 僕から猫を奪うと、兄さんはその猫の鼻のあたりに、ちゅっと口付けする。
「あッ」
 思わず声をだすと、なんだよ、と兄が睨む。
「う、ううん。なんでもない」
 ねえ、その猫。アルっていうより、エド、じゃない?兄さんみたいな、金髪がきれいで、目も大きいのに、すこしキリリとしていて。…小さいし。
「アル〜今日は兄ちゃんが遊んでやるぞ」
 なんて、小さいときの僕に言うような言葉で、兄さんは猫とじゃれあっていて、それを僕はかわいい、と思う。
 大きな猫と小さな猫。
 ねえ、兄さん。つまりは、貴方は暇で僕に構って欲しいんだよね?
 でも、遊んで欲しいなんて、いえないから、そうやって気をひこうとして。
 
今日は掃除の日だからね、遊んであげないよ。
 僕は、兄さんにかまわず掃除を続ける。リビングは終わったから、次はキッチン。朝から自分の部屋と兄さんの部屋を掃除して、午後は一階と決めていたから、その通りに掃除をしている。

「痛ッ!」
 兄さんの小さな声が聞こえたので、僕はキッチンからリビングのほうへいってみると、兄さんの手に三本の傷が。
「引っ掻かれたの?」
「うん、逃げていった…。アルに逃げられた」
「ちょっと、その言い方は嫌だよ。僕はここにいるでしょ」
 薬箱をとりにいって、兄さんの手を消毒する。そして、ガーゼをあてようとした、そのとき。
 表の通りのほうから、キキーと車のブレーキ音が聞こえた。
「?」
 僕たちは事故かとおもい、通りへ出ると、車が止まっていて、すぐに走り去っていった。その、車がいたところをみると。
「ッ!」
 僕がいくより、兄がその小さな身体をだきしめていた。
 それは、金の猫。
 小さな猫が、血を流している。まだ、脈があるようで、身体の一部がどくん、どくんと動いていた。
「アル!エイジを呼べ!」
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