よみもの アルエド(未来軍部)2

□暗号解読
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「だ〜わかんねぇ〜〜!」
 分厚い本を机に五冊ほど侍らせて、一冊の薄い本と交互に見ているエドワード・エルリック。彼は、国家錬金術師でもあり、ここ、東方司令部の司令官でもある。
 その彼が、仕事もせずに何に熱中しているかというと、その薄い本に書かれた錬金術の解読を試みていたのだ。彼の沽券のために言うが、一応これも仕事だ。
「大佐でも分からないことがあるんですか?」
 部下のガネット少尉が訊ねるが、エドワードは憮然として、その本を見つめる。
「こんな暗号初めてだ」
 実は、この薄い本は、殺人事件の証拠物件として上げられたものなのだが、その解読に国家錬金術師であるエドワードに回されたのだ。だが、何せエドワードでも解読できない錬金術の研究書。
「よほど、芸術に長けた錬金術師だったんだね」
 ひょいとその本を見た弟のアルフォンス。
「芸術のげの字も知らない兄さんに、解読できるわけないよね〜」
 あははは、と笑ったアルフォンスはすっかり弟の意見となっている。まだ、仕事中なのに、とガネットは苦笑した。
「うるさいッ!!」
 何せ、その研究書は、音符でかくされている。つまりは楽譜内に研究結果を残しているのだ。
「あ〜〜〜楽譜の研究書なんて始めてだよ。昔はほとんどといっていいほど、国内の研究書は読み漁ったと思ったのにな〜コレは初めてだ」
「もう一つあるんだけどね、研究書」
「その、絵画のヤツだろ?そっちはおまえにまかせる」
「ヒドイ…僕だって芸術になんて触れたことないのに」
 兄弟で解読に辟易していたところへ、ちょうど国家錬金術師になりたての、リーン・エイジ少佐が現れた。
「お疲れ様です。あ、これが今日上げられた研究書ですか?」
「ああ…」
「あれ?お疲れな様子ですね。大佐でも分からないことが?」
「ァ〜そうですそうです!俺は芸術にはとんと縁がありません!」
 あきらめモードのエドワードをよそに、エイジはエドワードが広げていた薄い本を除いた。
「楽譜ですか〜じゃあ、殺された錬金術師は音楽の知識があったんですか?」
「ああ。作曲とかもやってたらしいぞ。絵画にも造詣が深く、ほらこの絵画も暗号になっているらしい」
「ああ、そうなんですか。この曲、殺された人の作曲だったんですね」
「え?おまえ知ってるの?」
「いえ、この曲を知っているってだけで」
「楽譜を見て曲が分かるって、すごくないか?」
「そうですか?ちょっとかじった程度ですよ」
「って。おまえまさか、楽器が弾ける…?」
「ええ。ピアノを少し。ですが習うお金がなかったんで独学です。たいした腕では…」
 その言葉に、エドワードはがしっと両肩を掴んだ。
「弾け!これは命令だ」
「いえ、命令じゃなくてもそれくらい弾きますけど、でもどこで?」
 軍人にピアノが弾けるなんて意外、とまで思われているが、誰にでも特技というものは存在するだろう。
「ガネット少尉、ピアノ調達できないかな?」
「えええ!?ピアノですか?」
 ガネットはどうしようと思考を巡らしていると、アルフォンスが、あ、と小さく声を上げた。
「僕が調達してくるよ」
 そうサワヤカに言って、アルフォンスはそこから退室していった。
 そして、二十分後、それは到着した。
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