よみもの アルエド(未来軍部)2

□セントラル編二日目
1ページ/2ページ


セントラル第二日目
『後悔、確かな情愛』

 葉が重なり合って、風と共に音を奏でていた。エドワードとアルフォンスは、風が揺らす木々の下を無言で歩いている。
 静かなところだ。
 無言だが、しっかりと個人を現す墓標の数々。
 ふたりは、ぴたり、と足を止めて一つの石の前に立った。

「お久しぶりです、ヒューズ准将」
 アルフォンスがそういうと、どこかで『よお!オトコ前になったな!』と明るい声がしそうだ。
「久しぶり…」
 エドワードは、目を細めてその墓標を見つめた。
 アルフォンスは、そっと清楚な白い花を添える。
 
明るくて、自分たちを思い、導いてくれた人。
 何よりも家族思いだった人。
 …自分たちが巻き込んだ所為で死なせてしまった人。

「なかなか来れなくて、ゴメン。俺たち、今東方司令部にいるんだ。この俺が、司令官だなんで、笑っちゃうよな」
「マスタング少将も、もう直ぐ中将になれるそうですよ。まだ噂な段階ですけど」
「貴方に出来なかったこと、俺たちならできるかもしれない」
「マスタング少将を、大総統に押し上げ、協力することが出来ると思います」
 それぞれの言葉は、それぞれお互いに言っているようで、二人は向き合って笑った。
 
「ママ〜早く、早く」
 後ろで、女の子の可愛い声がして、二人はふと振り向いた。栗色の髪をツインテールにした女の子が、後ろから歩いてくる、女性を呼んでいる。その手には、白い花とピンクの花が握られていた。
「あ…」
 エドワードは、女性を見る。
「あら…?」
 女性も、気がついたのか、驚いている様子だ。
「グレイシアさん…!」
 アルフォンスが名を呼んだ。

「まあ!エドワードくんに、アルフォンスくん!?久しぶりね!えっと…アルフォンスくんが入隊するとき以来よね」
「ご無沙汰しております」
 二人は頭を下げると、ふと少女に目がいく。
「エリシアちゃん、久しぶり。忘れちゃったかな」
 アルフォンスがにこやかに訊ねると、エリシアは首を横にふった。
「アル兄ちゃん!エド兄ちゃん!エリシア覚えてるよ!」
「エリシアはいくつになった?」
「九歳だよ」
「そうか〜大きくなったな」
 エドワードは嬉しそうに、エリシアの頭を撫でた。すっかり幼児から少女に変わり、栗色のツインテールがよくはねてかわいらしい。
「会ってくれたのね」
 グレイシアが、墓標の前に立つ。そして、持ってきた花をおき、エリシアもそれに倣った。
「はい、遅くなりましたが、僕たち今東方司令部にいるんです。その報告に」
「転勤は聞いてたんだけど、東方だったのね」
「ええ。兄は司令官を、僕が副官をつとめています」
「あら、そうだったの!まあ、立派になられて…。ヒューズも喜んでいるでしょうね」
 グレイシアは細めた目を、墓石に向けた。
 そして、祈りを。
 しばらくの沈黙の後、グレイシアは二人に微笑みかけた。
「ヒューズ准将が守ってくれた、この命を、次につなげられるといいな、って思ってる」
「ありがとう。彼も喜んでいるんじゃないかしら…。正直、貴方たちが軍に入隊するとは思ってもみなかったの。願いも叶って、これから、ってときに入隊したでしょう?」
「仕方ないってのが半分。実際、俺はアルの入隊は反対だったし。だけどさ、俺たちがであった大人たちは、どうしようもなく優しかったんだよ。ヒューズ准将もね。なんだろ、ただ…一緒に仕事がしたいって思っただけなのかもしれない」
 グレイシアは、ふっと笑っていた。
「エドワードくんは変わったわ。雰囲気が…やわらかくなった」
 エドワードはどう反応したらいいかわからず、はにかむように微笑んだ。
「ねえ、ママ」
「なあに?エリシア」
 エリシアがグレイシアの袖をひっぱり、そして木の上のあたりを指差した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ