よみもの アルエド(未来軍部)2
□セントラル編三日目
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セントラル第三日目
『密会』
今夜は、佐官以上が集まるパーティが開かれる。その家族たちも招かれているため、とても華やかだった。
エドワードはというと、まったく行く気がなく、時間ギリギリまで渋っていたのだが、アルフォンスが無理に連れ出して今、ここにいる。
いる、といっても隅っこのほうで、なにやら飲んでいるだけで、アルフォンスは少し離れて将軍やらを相手にしている。
「エルリック中佐」
アルフォンスを呼んだことは分かっていたが、エドワードはふと顔を上げてアルフォンスを見た。
「ワイト中将」
アルフォンスが名を呼んだ将軍は、年齢は五十台半ばで微かに白髪交じり、顔も柔和な印象を受ける。だが、軍人らしく、ピンとした背筋は、威圧感があった。その中将の横には、亜麻色の髪をした女性が立っていた。
「君にも紹介させてもらてよいかな?娘のマニカだ」
「マニカ・ワイトです。よろしくおねがいします」
亜麻色の髪を結い上げた、長身の女性だった。長身といえど、女性の長身であるだけで、アルフォンスよりは十センチほど低く、手足はすらりとして長い。
「始めまして。アルフォンス・エルリック中佐です」
にこり、とアルフォンスが微笑むと、エドワードは思う。
あの女、落ちたな…。と。
だから、嫌なのだ。こういったパーティというものは。
この窮屈な正装も、将軍に笑顔で対応するのも、アルフォンスのああいう姿をみるのも!
お見合いパーティじゃねぇっつーの。
悪態をつく、エドワードだったが、アルフォンスとその女性を密かに見てみる。
アルフォンスと並ぶと、丁度身長差がぴったりで、バランスがいい。それに、目も大きいし、鼻筋も通っていて、美人だ。ワイト中将の娘なら、家柄もいいだろうし、上品な感じだ。
「美人…だな」
ああやって二人をみると、一つの絵画のようだなと思う。アルフォンスだって、表情や仕草は優雅だし、自分とは似ても似つかない上品さがある。家柄もよくないし、田舎出身だが、そんな雰囲気を纏うことはない。
エドワードはイライラしてきた。何故かは考えたくない。
飲んでいたものをテーブルにおいて、エドワードはバルコニーへ出た。
夜の冷たい空気が、エドワードの頬をひんやりと冷ましていく。
バルコニーには、下の庭へ降りていけるのか、階段が備えてあった。
小高いところにある建物なので、そのバルコニーから町の灯りがよく見える。
ヤキモチだって分かってる。
でも見たくない。
…もし、将軍とかが命令として娘の結婚を強要してきたら、アルフォンスは受けるのだろうか?
「まさか…」
アルフォンスは、中途半端を嫌うから、その娘を愛そうと努力するだろうな。子どもができたら、そいつを愛するんだろう。
それは、想像だけど、でもそんなことでエドワードの胸は痛みを伴う。
「マゾだ、マゾ」
自分で自分を傷つける。自虐的だな、俺。
自嘲気味に笑って、エドワードはバルコニーの手すりに肘をつけて、顎を乗せた。
「セントラルの星は少ないな」
見上げると、星が瞬いている。
「どこが一番多いのでしょう」
ふと、声が聞こえて、エドワードは振り向いた。
「エルリック大佐ですね?」
「ええ、あなたは?」
一人の男が立っていた。長身で、黒い髪と切れ長の目。いいバランスで整っている顔。
「サーチ・マーカー少佐です。エネル大尉をご存知ですよね」
「あ、ああ。エネルのトモダチ?」
「ええ。士官学校の同期です」
「へえ、配属は?」
「今は南方司令部です。以前は前線に配属されたこともあるので、エイジ准尉、いえ、今は少佐ですね。とも、ご一緒したことがあるんですよ」
「そうなのか。エネルもエイジも元気だぜ?」