よみもの アルエド(未来軍部)2

□セントラル編六日目
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第六日目

『守りたい人』

マニカの件を皮切りに、アルフォンスを狙った事件の犯人が逮捕され、(もちろん金で買われた人間だったが)、ワイト少将は娘に命令してはいない、と犯行を拒否。だが、准将に格下げされてしまった。そのため、エドワードを狙ったことは、そのまま有耶無耶になってしまった。そして、マーカーはというと、なんの繋がりがない、ということで、事件には関係ないとされていた。
おそらく、マーカー自身がうまく行ったのだろう。
 
「少将のライバルもいなくなったし、俺らもちょっとは楽になるかな」
 エドワードは、ロイの執務室のソファに足を投げ出して言う。
「何を言う。おまえも、そろそろそういう時期に来ているんだぞ。気をつけろ」
「東方ではそんなのないもんね〜。あんたがらみばっかりだよ!ったく」
「でも、兄さん。僕たちが大総統の椅子取りゲームに巻き込まれるのは、仕方ないことだよ。いずれ、少将の下につくのなら」
 アルフォンスになだめられて、エドワードは小さくなる。アルフォンスの足には、まだギブスが嵌められていた。
「お前も、セントラル帰還するまでに、せいぜい東方での人脈を広げておけよ」
「そういうのは、アルがやってくれてるから」
「まあね。でも、少将。兄の人脈は広げようとして広がってるんじゃないんですよ。かってに広がっていくんです」
 ロイは、ふっと笑った。それすら、ロイの策略なのだろうが。
「五日間ご苦労だったな。今日はもう帰ってもいいぞ。明日、東方へもどるんだろう」
「ああ」
「あ、そうだ。うちのカワイイ娘に会いにゆかんか?」
 そういえば、お祝いを送っただけで、しっかりと顔を見ていない。
「そうだな。アルはどうする?足が辛いんだったら…」
「ううん、平気。会いたいな」

 中央司令部を後にした二人は、さっそくロイの家へ向かった。アルフォンスは松葉杖を器用に動かして、歩いている。
 一度だけ着たことのある家だったので、迷うことなく目的地につき、出てくれたのは、リザだ。
「あら、いらっしゃい。こっちに来ている事は知っていたのだけど。どうぞ、上がって」
「お邪魔します」
 途中に寄った花屋でブーケを作ってもらっていたので、それを渡すと、リザは嬉しそうにうけとってくれ、花瓶に添えてくれた。
 
 二人は、白いベビーベッドを覗き込む。そこには、薄ピンクの服を着た小さな赤ん坊がすやすやと寝息を立てて眠っている。
「わ〜カワイイですね〜」
「ありがとう。目を開けると、ロイに似ているのよ」
 花のように微笑むリザに、二人はああ、幸せなんだな、と感じる。
「この前はお祝いをありがとう。ステキな服なんで、嬉しかったわ」
「兄さんが選ばなくてよかったですよ。兄さん、女の子だって言うのに、黒い服とか、なんかグロテスクなデザインばかり選ぶんですよ」
「なんだよ〜俺だってまじめにえらんだのによ〜」
 二人の会話に、リザはくすくすと笑った。
「それはそうと、足の具合はどう?」
「治りが早いって褒められました。っていってもまだ二週間はこんな調子ですけどね」
「そうよね。気をつけてね」
「ありがとうございます」
「でも…守る者がいるからこそ、人は強くなれるのよね」
 
リザの言葉に、二人は引き寄せられるようにその顔をみた。優しい微笑みは、まるでどこかの宗教の、神のような美しさで。
「貴方たちは強いわ。それは、お互いがお互いを守りたいと常々思っているからでしょう。私は、ロイを守るために、背中を預けるといってくれた彼のために、ずっとそばにいた。この子ができてから、私は…嬉しい反面、悩んだわ。愛する人を、ロイを守れないのではないか、って。でも、彼は言ってくれたの。私たちの『愛』を守るために、君は家にいてくれ、と。私の背中は、リザとこの子がいるからこそ、自分で守ることができる。でもお腹にいるこの子は今、リザにしか守れない。そして、リザとこの子を今度は自分が守るのだ、と」
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