よみもの アルエド(未来軍部)1

□栄転?
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栄転?

「ということで、鋼の。来週から東方司令部勤務だ」
「はっ・・・?」
 呼ばれてこのクソ忙しいのに、何の用事だと、無能の執務室までいくとそう言われ、おもわず間抜けな返答をしてしまった。
「栄転と思って、張り切って行きたまえ」
 はっはっはっは。と笑って見せる少将の顔を一発殴ってやりたくなった。
「ちょ、ちょっとまてよ。まあクソ少将と顔を毎日合わせなくてそりゃ本望だが、どうしてだ!?」
「これが、拝命書。がんばりたまえ」
「おい、無能!答えになってねー!」
「無能とは失敬だな、鋼の。部下をスキにもっていっていい。だから言って来い」
 ギリリと少将を睨むが、彼は急に声のトーンを下げた。
「おまえに悪い話はもってこないぞ、わたしは」
「・・・。どういうことだよ」
「おまえがそれなりに優秀だということは、軍は知っている。俺の後を追っている、といえばわかるかね?」
「いずれ、またセントラルに戻してやると?」
「ああ」
「ハッ、そんときゃ、准将ってことか?」
「ふ、もしかして、君の副官が中佐になっているかもしれないが」
「・・・。まあ、俺たちは上に行こうとは思ってないけどよ。ま、軍にいるうちは命令に従っておくよ。で、部下は好きにもっていっていいんだよな?」
「ああ」
「じゃあ、ハボック大尉とー、ブレダ大尉とー、ホークアイ少佐とー」
「まてまてまて。それはやれんぞ、鋼の」
 あわてた少将をにっと笑って、
「なーんてな。俺はアルだけでいいよ。他はいらね」
「ガネット少尉は?」
「もらっていこう」
「じゃあ、手続きをしておく」
「ヨロシク」
 俺は、適当な敬礼で踵をかえした。
「あ、まて。鋼の」
「ああ?」
「不穏な動きがある。気をつけろ。狙われてるぞ」
「はあ?」
「まあ、お前なら大丈夫だろうがな」
「ふーん、まあ、それなりに気をつけるよ」
 
 自分の執務室にもどった俺は、早速アルとガネットをよびつけた。
「お呼びでしょうか」
 アルはすっと背筋をのばし、軍にいるときだけは上官としての敬語を使うようにしている。
 ガネット少尉はアルと身長は変わらないが、すこしおどおどした感じが抜けない印象だ。だが、頭脳、銃火器の扱いは優れている。そりゃ、師匠があのリザ・ホークアイ少佐なんだから当然か。
「アルフォンス・エルリック少佐、アンディ・ガネット少尉。来週から東方司令部移転となった。ついて来い」
「!」
 一瞬二人は目を見開いた。だが、すぐに声をそろえて、
「yes.sir」
カツンと軍靴を鳴らして、右手をこめかみにあてた。
「しかし、わたしでよろしいのでしょうか?」
 ガネット少尉がオズオズと聞いてきた。
「嫌なのか?」
「ち、ちがいますっ!ちがうんです。ただ、エルリック少佐は優秀な方ですし、大佐のお傍にいるのはわかりますが、私は・・・」
「俺はおまえの銃の腕を買っている。ホークアイ少佐くらいな。いざとなったら集中して相手を打つ、そしてそのときの的確な判断がお前にはできる。嫌だといっても俺は許さないからな」
「はっ!」
再びガネット少尉の敬礼を受け、にっと笑うと、目の端でアルが微かに笑ったのが見えた。

「だから、みんな兄さんを慕うんだろうね」
「はあー?」
「有無を言わせないというか、従ってしまうというか・・・。それが貴方の魅力なんだろうけど」
「よくわかんね」
 俺が荷物の整頓をしていると、アルがこの本どうする?と聞いてきた。
「あー、いらねーな。頭に入ってるし、その内容。どうせ増えるんだから、最低限の本しかもっていかねーぞ。この家は買ったんだからこのまま置いておいても問題ないだろ?」
「そうなんだけどさ。まあ、家の荷物よりも、軍の書類のほうが始末が大変だろうねえ」
「あと、五日で終わらせる!」
「東方にもっていくのだけはカンベンしてよね」
「ぜ、善処する・・・」
「あてになんない」
「うるせー!」
こうして、東方司令部への移転準備は着々と進められていた。・・・俺の書類以外は・・・。
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