よみもの アルエド(未来軍部)1

□バレンタインデーには…
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「すっげぇな、おまえの机」
 エドワードは外回りから共に戻ったアルフォンスに、にやにやと笑いながらいった。二時間ほどまえまで、アルフォンスの執務デスクには一つもなかったのだが、かえってくると、山のようにピンクや赤などといったリボンや、包装紙、そして、花が積まれていた。

「お疲れ様です、エルリック大佐、エルリック少佐」
 ガネットが敬礼して言葉をかけるが、申し訳なさそうに言葉を続けた。
「あの・・・。大佐の執務室もけっこうスゴイことに・・・」
 その言葉を聞いたアルフォンスは真っ先に、隣の部屋のエドワード個人の執務室への扉を開いた。
「さっきの言葉、そのまんま返すよ、大佐」
「げ・・・」
 アルフォンスと同じくらいの量のプレゼントが山のようにおいてある。
「これは求愛のしるしなのか?」
「うん・・・、まあそう受け取っていいんじゃない?恋人同士贈り物をしたり、メッセージカードの交換なんてするらしいけど。東の島国では、女性が愛を告白する日なんだってね。チョコレートをあげるんだって」
「ふーん・・・」
 二人はゲンナリして、そのピンクの山を見つめた。

 そうか・・・。今日はバレンタインか。エドワードは、何も用意していないことに気づく。かといって、弟の好きなものを用意できる時間もないし、帰りに花でも買っていこう。

「さて。この山を退かして、ちゃっちゃと仕事片付けるか」
「あれ、やる気だね、今日は」
「ああ。今日俺、早く帰るから」
「え?なんで?」
 なんでも。そう意地悪く笑うと、エドワードはアルフォンスを部屋から追い出し、一人になる。
「さて、やるぞー!」
 
 後、五時間後。
 今日分の仕事に限をつけて、エドワードは帰り支度する。
「アル、お先」
「お疲れ様。僕はまだちょっとあるから。あ、ご飯は作るから」
「おう。気をつけて帰れよ」
「大佐もね」
 エドワードは背中で手を振って、扉を閉めた。だが、思い出したように、扉を開けていった。
「俺のプレゼント、エネルが車で運んでくれるっていったから、おまえも頼んだら?」
「いいよ、少しずつもって帰る」
 アノヒトには借りを作りたくない・・・と心でつぶやいた。

 エドワードはエネルが待つ車へ急いだ。エネルにも半分以上運んでもらっていたので、エドワードの分は少しだ。
 エドワードも乗り込み、ゆっくり車は動き出した。
「悪いな、エネル」
「どういたしまして。オモテになりますな、大佐殿」
「茶化すな。アルの方がモテルよ。まあ、そのほうが俺は嬉しいけどね」
「どうしてだよ?」
「弟の良さをみんなが知ってくれてるんだぜ?俺、めちゃくちゃ自慢してぇ」
 エネルは呆れた声で、
「そりゃ、ただのブラコンだ」
「それでもいいんだよ。俺のたった一人の家族をほめてもらえるなんて、嬉しいじゃん。自分がほめられるより、百倍嬉しい」
「じゃあ、アルはどうおもってるんだろうな」
「え?」
「おまえがモテて嬉しいと思っているのか?」
「・・・・さあ?俺、聞いたことないし」
 エネルは苦笑して、咥えていた煙草をはずし、外へ捨てる。そして、その右手でステアリングを握り、左手を助手席の後ろへもっていった。
 そして、スキをみて、彼はエドワードの唇に自分の唇を重ねた。
「!」
 そして、次の瞬間、急ブレーキをかけたのは言うまでもない。
「おま・・・!アブねえな!」
「ごちそうさま」
 運転中にキスされて、驚くやら意味がわからないやらで、エドワードは赤面しつつ、戸惑っていた。
「おまえ、どういう意味・・・」
「さあね」
 エネルはニッと笑って、前を向いて運転を始めた。
 そんなことがあったもんだから、結局帰りに寄ってもらう予定だった花屋はとおりすぎ、エルリック家まで到着してしまった。
「ほい、これで最後」
 荷物を降ろしてもらったが、エドワードは無言だ。
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