よみもの アルエド(未来軍部)1

□ヒカリ
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『東方司令部のエルリック少佐からお電話です』
 中央司令部マスタング少将は少し、無言になりながらも、つないでくれ、とつぶやくようにいった。
「アルフォンス・エルリック少佐ですが」
 開口一番、彼の声はとげとげしかった。
「・・・・・。なんだね?」
「お忙しい中もうしわけないんですが、そろそろエルリック大佐をお返し願いたいですが」
 刺々しい言葉が続く。いや、おそらく表情は電話越しで見えないが、おそらく笑顔だろう。
「鋼には、まだやってもらわなければいけないことがある」
「少将は、たしかお小言があるだけだとおっしゃったはずですが?」
「すまんな、もうすこしだ」
「ええ、構いませんよ。ですが、こちらの仕事も遅れることを念頭において置いてくださいね。それと、休暇申請を大佐から出させますので、そのぶんそちらで処理していただくよう手配させていただきますので!」
「まてまてまて、少佐」
「なんでしょうか?」
「相談なのだが・・・鋼のを、研究所に寄越すつもりはないか?」
「なんですか?よく聞こえないですが」
 今の言葉で気温が一気に零度以下になったような寒気を感じる。
「・・・いや、なんでもない。あと三日で返す」
「三日!?明日にでも返してくださいよ!切羽詰ってるんです!」
 たしかに、司令官不在が一週間続いているのだ。代理をしているアルフォンスは辛いことだろう。
「ああ、だが、あと三日は・・・」
「そんなことより、兄の体調は大丈夫なんですか!?電話が取り次いでもらえないから、ここに連絡したんですけど!」
「ああ。だいじょうぶだろう」
「だろうって!そろそろ寝不足がたたって、倒れるくらいなんですけど!そんなことないですよね!?」
 するどい、と思わずもらしそうになった。だが、
「んッ、いやいや。そんなことは・・・」
「そうですか・・・。ではまた」
 そういうと、一方的に電話を切り、ロイは、ふう・・・とため息をついた。
「するどいな、さすが・・・・」
「少将。いま、セントラル病院から連絡が」
「なんだ?」
「意識が回復したため、退院したいと大佐が申してるそうです」
 リザがそう伝えると、
「ああ、退院許可する。それと、病院に手回しして、エルリック少佐が連絡しても大佐が入院したことは言うなと伝えてくれ」
「何か不都合でも?」
「あいつが怒ったら、鋼のよりも大変だと分かっているだろう」
「ええ。正当な怒り方をされますがね、彼は」
 ロイは大げさに目を剥いて見せた。

「ちツ」
 珍しく、舌打ちをして電話を切る少佐を横目でみたローズ中尉は、どうしたのですか、と尋ねた。
「緘口令を先にしかれた」
「え?」
「いや。こちらの話」
 ロイの後にすぐ、セントラルの病院に電話をしたのだが、先に口止めをされたのだった。
研究所に来いだと!?何を考えているんだ、少将は・・・!前々から兄さんの研究時限装置付き練成には中央が賛成していたことは知っていたが、まさかこんなに早く研究所にいかせようなんて・・・。
「クソ・・・」
 常に冷静沈着なアルフォンスが、悪態をつく珍しい姿を、ローズは不思議そうに見ていた。
 兄さんが、研究したいといったら確実に研究所にいってしまう。それだけは阻止したい。
 こういうとき、地位が欲しいと思うアルフォンスだった。
 一度目を閉じて、冷静さを思い出すかのように、息を吸ってはいた。そして、アルフォンスは再び電話の受話器を上げた。
「そちらに、エルリックという方はお見えでしょうか?」
「職員ですか?」
「いえ、僕生き別れた兄を探しているんです。そちらにいるという情報だけを頼りに電話をしているもので・・・」
「おまちくださいね」
 少しの間、受話器で紙をめくる音がする。
「職員にはおりませんが、患者さんにいましたね」
「ええ!?ほ、本当ですか!?名前は・・・もしかして・・・エドリックですか?」
「ああ、残念です。エドワードさんていう方よ」
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