よみもの アルエド(未来軍部)1

□イタズラ
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「紙飛行機ってどうやって作るんだったっけ・・・」
 執務室の大部屋でエドワードはポツリとつぶやいた。当然、三人の部下、エルリック少佐、ローズ中尉、ガネット少尉は一斉に、司令官を見た。
「この忙しいのに、何のんきなこといってるんですかね、ここの司令官は」
 当然こういう言い方をするのは、弟でもあり、副官のアルフォンスだ。
 エドワードはほれ、と自分の持っていた一枚の紙、「大総統印、銀の箔押し」を、渡す。
「・・・・」
 アルフォンスはその紙を手に取り、読み終えると、ささっと紙飛行機を錬成(といっても、アルフォンスの場合はちゃんと折る)し、エドワードに渡した。
「あ・・・あの」
 ローズがアルフォンスの珍しい行動に戸惑う。
「よく飛ぶかもね」
「おう」
 何を考えているのか、兄弟二人で幼いころのような言葉をかわし、エドワードはすっとその紙飛行機を飛ばす。それはすっと、空気を裂くようにまっすぐとび、扉にあたって、カサリと落ちた。
「いったい何が書かれてあったのですか?」
 ローズの問いに、アルフォンスはため息をついて言った。
「ウエの考えることは無駄が多いよ。軍に所属している国家錬金術師にも、査定を行うようにとのお達しだよ」
「えっと、軍所属じゃない研究者は、年に一度の査定があるんですよね?それと同じ内容なんですか?」
 ガネットの問いに、今度はエドワードが答えた。
「ああ。実技か、研究か、どちらか一方でいいらしいが、俺とエルリック少佐の二人がいなくなれるはずないだろ?それに、俺たちにレポートを書く時間があるのか!?」
「す、すみません・・・」
 語尾が強くなったため、気の弱いガネットは、自分が悪いわけでもないのに、反射的に謝ってしまったが、エドワードは気にしていないようだ。
「あれ、最後まで読んでいなかったんですか?大佐」
「何が」
「今の。二週間後にこちらへ査定担当の方が見えるってかいてありましたよ?」
「はあ!?ってことは、二週間でやれってことなのか!?」
「実技でいいんなら楽じゃない?」
「ああ、そうか。で、査定担当はだれなんだ?」
「おって連絡って書いてあったじゃない。最後まで読んでから、飛ばしてよね」
「はいはい」
 
 そんな翌日、査定担当の名が記された紙が送られてきていた。
「なあ、エルリック少佐」
 にやにやと笑いながら、エドワードが自分の執務室から大部屋へ紙をちらつかせながらやってきた。
「あ、先ほどの手紙ですか?」
「うん。査定担当誰だとおもう?」
「・・・・マスタング少将」
「ええ!何でわかるんだよ!」
 あんたの顔だよ、といいたくなる。
「そんないたずらっ子のような顔で来られたら、誰でもわかるよ。一人なんてことはないよね?」
「うん。俺がにやついてるのは、少将じゃねーよ。キット少将だよ」
「・・・ああ、あの」
 アルフォンスも、大柄で、いつもニヤついた表情の中年を思い出す。
「あのオヤジ、いっつも俺のことわざとオンナ扱いするし、研究員のくせに権力振りかざすし、俺のこと馬鹿にしてるし」
「僕も嫌味なんてしょっちゅうだよ」
「俺、実技やめた。研究にする」
「ええ!?時間的に無理じゃないの!?」
「やる。おれ、あいつを研究所から追い出して、前線配属にまわしてぇ」
 くししし、と意地悪く笑ったエドワードを、アルフォンスは止めるすべをみつけられなかった。
「でも、マスタング少将はいいのかな?査定」
「そうだよなー。もしかして、将軍クラスはいいのかもよ」
「・・まあね。必要はあんまり感じられないものね。どうせなら、僕たちもカンベンして欲しいよ」
「楽しもうぜ、アル」
 うわー楽しそう・・・。アルフォンスは悪戯には全力投球な、幼かった兄を思い出していた。


 そして、査定当日。
「おまちしておりました。マスタング少将、キット少将」
「うむ、出迎えご苦労。では見せてもらおう」
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