よみもの アルエド(未来軍部)1

□サボリ場
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「あっ、きたねっ!」
「ふぉふぉふぉ、これで32勝、0敗」
「くっそ〜〜〜〜!」
 ここは、東方司令部の一室。ここでもっともエライはずの将軍と大佐が頭を突きつけて、一つの黒と白の盤を囲んでいいた。
「今日こそは、勝つつもりで来たのによお・・・」
 将軍は白いひげを揺らし、目を細めて笑う。小柄なエドワードよりも、さらに小柄な老人だ。
「マスタング少将が大佐のころは、一勝を餞別にくれてやったがな」
「少将より、多くもらってくつもりだぜ、俺は」
 そうのんきにゲームを楽しんでいたふたり。ふと、廊下で、大佐!エルリック大佐―!と呼ぶ声が聞こえた。
「呼んでおるぞ」
「ここにいることは誰にもいってないから、ばれねーよ」
「そうかのう?」
 しばらく呼ぶ声を聞いていた。どうやら部下のガネット少尉の声のようだ。
「失礼します」
 急に扉が開き、現れたのは優秀なるエドワードの副官。弟のアルフォンスだ。
「エルリック大佐を引き取りに参りました」
 敬礼をびしッと決めたアルフォンスに、将軍は、声を立てて笑っていた。
「げ・・・。なんでおまえは分かるんだよ・・・」
「大佐の行動パターンは把握済みです」
 淡々といいはなち、いくよ、と強い視線で言われた。
「は〜あ。んーじゃあな、将軍。邪魔したな」
「おう、またこいや。そんときは、もうちょっと、隊の扱いを勉強しときなさい」
「そういうの、弟が担当なんで」
 エドワードはそういうときびすを返した。
 静かになった部屋に、将軍はにやりと笑う。
「・・・あいつは大物じゃの・・・」
 

「ごめんなさい・・・」
「いまさら謝ってもなんの解決にもならないから、とにかく仕事をこなしてよね」
「うげ・・・」
 エドワードの個人の執務室には、書類の山が三つ。床において、一つにまとめたら、エドワードの身長くらいあるんじゃないだろうか。
「徹夜だよ、いいね?」
「はい・・・。母さん、アルフォンス君がコワイです・・・・」
 心の声がオモテに出てしまった。
「だれが怖くさせるんでしょうかね!」
「・・・はい」
 温厚なアルフォンスにしてはめずらしい。イライラしているようだ。
「何、イライラしてるの?」
「あなたが仕事すればイライラしませんよ!」
「・・・ご、ゴメンナサイ・・・」
 蛇ににらまれた蛙。に、兄ちゃんはおまえをそんなヤツに育てた覚えはないぞーっ!と心で嘆きつつも、しぶしぶ椅子に座った。
 アルフォンスは二、三枚書類を見だしたエドワードを確認した後、彼の個室から出て行く。それを見たエドワードは、はあ、とため息をついて天井を見上げた。
 そして、何を思ったのか、エドワードは先ほどアルフォンスが出ていった扉の前にたち、両手をパン!そして、青い錬成光が放たれる。
「!?」
 扉の向こう側は、部下の大部屋となる。その光が扉の隙間から漏れ、それにおどろいたガネット少尉とローズ中尉が扉を見つめた。 
 アルフォンスはというと、違う仕事で大部屋にはいなかった。
「今、錬成されましたよね・・・?」
「ええ」
 ガネットとローズが顔を見合すと、ガネットがその扉を開こうと、ノブを回した。
「・・・開きません」
「鍵をかけたかっただけなのかも。まあ、錬金術を施されては、私たちでは何もできないわ。少佐が帰ってくるまで待ちましょう」
「はい」

「で。五時間出てきてないと・・・?」
 アルフォンスが帰ってきたのは、その五時間後。
「また、実は雲隠れされていたのでは・・・」
 ガネットの言葉に、あ、と小さくもらし、アルフォンスは、ノブを回した。
「ホントだ、開かない」
「す、すみません」
「ガネット少尉は何にも悪くないですよ。少尉も中尉ももう今日は休んでください」
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