よみもの アルエド(未来軍部)1

□おまじないより不確かなもの
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 まぶしい光が差し込む。ゆるゆるとしたまどろみの中が心地よくて、エドワードはそのまま布団にもぐる。
「・・・・」
 あれ?アルフォンスがいない。
 いつも一緒に寝ているわけではないので、隣にいないことはある。それに、アルフォンスのほうが朝が早く、いつも先に起きている。だから、今日も・・・。
「うわ!」
 エドワードは布団から跳ね起きて、窓の外をみる。
 日が高い。
 あわてて、時計を確認すると、
 10時24分・・・さんじゅうびょう・・・・さんじゅういち・・・
「遅刻じゃん!」
 アルは?アルが俺を起こさないはずがない!
 エドワードは、自室から飛び出して階下に降りると、テーブルにはいつもならサラダやスクランブルエッグといった朝食が用意されているのに、何もない。
「あ・・・」
 そういえば、アルは当直勤務だった・・・。
「やべっ!」
 エドワードは顔を洗って、着替え、すぐに飛び出した。

「おはようございます、大佐」
 東方指令部に入るなり、すれ違う者にそう挨拶されるが、エドワードはそれどころじゃない。いつもなら、結んでいる髪も今日は下ろしたまま振り乱して、司令室に向かった。
「わりィ!」
 エドワードが入室するなり、部下が直立して敬礼をした。
「おはようございます、エルリック大佐」
「おはよう、ローズ中尉。当直ご苦労さん。もうひとりの当直当番は?」
「大佐のお部屋に」
 エドワードはそのまま、自分の個室に入った。
「おそようございます、大佐」
 うわっ、機嫌悪!
 エドワードは一歩入った部屋を、後ずさり。だが、その腕をアルフォンスにつかまれて、引き込まれてしまった。
「寝坊だなんて、いい根性してんじゃん、兄さん!」
「わわわ、悪かった!許せ!」
「昨日何してたんだよ」
「・・・・まあ、それは後々話すとして、何か変わったことは?」
 今は仕事中。切り替えは大事だ。アルフォンスはため息をついて、エドワードのいつもと違うところに目をつけた。
「なっ、なんで髪結んでないんだよ!」
「あ、ああ。時間なくて」
「こんなんで歩いてきたわけ!?」
「あ?ああ、まあな」
「もっと自覚してよね!」
「な、何を・・・」
 兄さんはね、髪を下ろしたら可愛いさが倍増なんだよ。これ以上ライバルを増やさないで!!・・・と、叫びたいところだが、ぐっとその言葉を飲み込み、ため息で昇華する。
「もういいよ」
 手持ちの櫛もゴムもリボンもないので、仕方ない。
 アルフォンスは、エドワードに敬礼していった。
「では、当直勤務終了します」
「おう、ご苦労さん。ゆっくり休めよ」
「仮眠室にいますので」
「ん?帰ってもいいぞ?」
「いえ、帰れません」
 強く言うアルフォンス。エドワードは、そんなに急ぎの仕事あったっけ?と疑問符が並んでいた。
「ローズ中尉にも休むようにいっといてくれよ」
「了解」
 アルフォンスは退室するなり、はあ、とため息をついた。
 仮眠室へ向かうために、廊下へ出ると、遠くで噂話が聞こえる。聞き耳を立ててみると、どうやら兄のことを言っているようだ。
 若くして大佐という地位にいるため、嫉妬されることの多い兄は、しばし命まで危険に晒されることがある。それを守るのが、自分だと思っているアルフォンスは、そういう噂話を逃さない。
「みたみた?今日の大佐。可愛いのよ〜vv」
「みたみた!髪下ろしてるのよね!サラサラでいいわよね〜」
 黄色い声。つまりは、女性下仕官たちの噂話だった。
 アルフォンスは、ほっとして、肩を下ろす。女性下仕官に持てることは、かまわない。害がないとアルフォンスの中で位置づけられている。
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