よみもの アルエド(未来軍部)1

□国家錬金術師とは?
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エドワードがたまたま、休憩を外の喫茶店で取ろうとしたときのことだった。お気に入りの店まであと少し、といったところで右の角から子供がひとり走ってきて、エドワードとぶつかってしまった。
「わ!」
 子供、といったが、エドワードとそんなに身長は変わらない。すこし低いくらいだ。そして、年齢は十二、十三といったところだろうか。
「わりーな、坊主」
 子供はさっとエドワードの反対がわ、つまり左にまわって隠れるようにしたと思ったら、バタバタと数人のオトナが右の角から走ってきた。
「おい!クソガキ!まちやがれ」
 一人の厳つい男が、その子供の襟ぐりを掴もうと手を伸ばした。だが、エドワードが先にその手を掴む。
「おい、やめろよ」
「なんだと!軍人か!?」
「どうせ、下っ端だろ」
 他の男たちも加勢する勢いで、四人の男たちがエドワードを囲った。
「なぜ、この子供を追うんだよ」
「こいつは借金のカタに売るんだよ!」
 そういった男が、殴りにかかるのを、エドワードはよけて、手を打ち鳴らした。そして、地面に手をつくと、その地面がぼこぼこと突き出て、とげのように錬成される。男がそれに殴られて、気絶した。
「こいつ・・・!」
 エドワードは、あっという間に、四人すべてを錬成で束縛する。それは、地面から突き出た十字架にはりつけにされるような形だった。
「坊主、怪我は?」
 そう言葉をかけたが、子供はエドワードを睨みつけた。
「おまえ、国家錬金術師か・・・!」
 その瞳は、怒りの炎で縁取られ、射抜くような視線だった。


「で、持ち帰ってきちゃったの?犯人(公務執行妨害をむりやりつけたため、犯人扱いにして)は憲兵に任せて?」
「ああ」
 アルフォンスの淹れた紅茶をすすり、エドワードはちらりとふてくされたような態度の子供を見た。
 アルフォンスがため息まじりに、
「ここは託児所じゃないよ」
 場所はエドワード・エルリック大佐の個人の執務室。
「知ってるよ。でも、おまえでもそうしただろ?借金のかたに売られるとしっちゃあ」
「そりゃ・・・」
 アルフォンスは、すっと子供が座るソファに向かう。そして視線を合わせた。
「こんにちは。僕の名は、アルフォンス。君は?」
 アルフォンスは、優しく微笑み、子供にそう尋ねる。
「・・・キラ」
「きら?くん?」
 子供が、帽子をとると、ふわりと長い金髪が降りてきた。
「キラちゃんか。きれいな髪だね」
 その笑顔に、キラは微かに赤面する。
「それで?親は?」
 エドワードに対しては、キリリと睨みつけて何もいわない。
「てめえ・・・。アルと俺と対応が違うじゃねーかよ」
「兄さん、女の子に対してそんな言葉・・・」
「・・・兄さん?アルフォンスの兄さんなのか、コイツ」
「コイツ!?」
 エドワードは目を三角に吊り上げたが、キラは無視してアルフォンスだけを見ていた。
「うん、そうだよ。君の髪色、兄さんに似てるね」
「げ・・・!こんなチビと一緒にすんなよな」
 キラはエドワードを指差して、言った。
「てめー、人がおとなしくしてりゃーいい気になりやがって・・・」
 わなわなと手を震わせ、エドワードの地雷を見事に踏みつけたキラを睨む。だが、キラは視線をアルフォンスからそらさない。
「・・・家族がいるだけましだな・・・」
 寂しそうにポツリとつぶやいたキラにたいして、エドワードの怒りは収まる。
「なあ、キラ。おまえ、国家錬金術師が嫌いなのか?恨んでる?」
「あたりまえだ!アイツが国家錬金術師になったために、家族がバラバラ。母さんはアイツに殺されたし」
「アイツ・・・?」
「・・・」
「ねえ、キラ。僕たちに話してくれないかな?」
 キラは、ぽつり、ぽつりと事情を話しはじめた。
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