よみもの アルエド(未来軍部)1

□君が生まれた日に
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 久しぶりの休日。アルフォンスは、普段買えないものを調達しに出かけた。
まずはじめに、お気に入りの花屋の女店主に声をかけ、帰りによることを伝えつつ、淡いピンクのチューリップをピックアップ。
次は、なじみの本屋に立ち寄って、取り寄せてもらっていた書籍を三冊購入。一冊はエドワードが注文していたものだ。そして、大通りにあるシンの国の調味料を扱う店へと入った。ジャム瓶ほどの大きさの瓶につめてある調味料を買い、次は・・・と思ったら通りに面した公園にある噴水の脇で、女性がうずくまっているのが見えた。
 思わず、足をそちらにむける。どう考えても、普通の状況じゃない。
「大丈夫ですか!?」
 女性は、ふと顔を上げようとしたが、腹部が痛むようで起き上がれない。
「痛・・・」
 見ると、女性の白い手が大きな腹部をさすっている。
「赤ちゃん・・・ですか!」
 アルフォンスは、ふとヒューズの妻の出産を思い出す。あのころは、鎧だったが、その経験がいまでは特別なものとなっている。
 どういう状況で痛いのかは分からないが、額に汗が滲み、苦しそうだった。
 アルフォンスは、持っていた書籍を無意識に置き、女性を抱き上げてた。そして、病院へと駆け込んだのだった。


「聞いた?エルリック少佐、妊婦さんと一緒に歩いていたんですって〜もしかして、隠し子!?」
「えー少佐が!?」
「もう、司令部中、噂よ。実は結婚してたんじゃないかって」
「え!ショック〜」
 翌日、女性下仕官が噂している内容は、すぐにエドワードの耳にも届いた。そのため、エドワードは少しだけ、不機嫌だ。
 そんなことがあるわけない、と思っても火のないところに煙はたたない。噂がまわるということは、ほんとうに何かあったからだ。
 執務室に一人で書類と向き合っていると、コンコンとノックする音が聞こえた。
「エド」
 司令室内で、大佐である彼にそう話しかける男は、たったひとり。
「エネル大尉。どうした?」
 咥え煙草で入室してきたエネルは、ほらよ、と紙袋を渡す。
「ん?」
 エドワードは、あけるように促されて、その紙袋を覗き込んだ。
「本が三冊に、瓶?」
「昨日、エルリック少佐が落としたものらしいぜ?」
 一冊は自分が頼んだものだ。それに、瓶は、シンの国の調味料で、アルフォンスが気に入って料理に使っていることをエドワードは知っている。
「ふーん・・・。なんでここへ?」
「なんでも、たまたま俺の部下がエルリック少佐を見かけたらしくって、妊婦の調子が悪くなったかなんかで抱き上げたんだと。そんとき置いたみたいだぜ?公園の噴水のところで」
「妊婦?」
「ああ。よくはしらねーけどよ。じゃ、おれ仕事に戻るからよ」
 そういうと、エネルは踵を返して、退室していった。
入れ違いに、アルフォンスが入室してきた。
「エネル大尉、どうされたんですか?」
「うん、コレ」
 エドワードが紙袋を渡すと、ああ、とアルフォンスは分かったようだ。
「昨日、何があったんだよ。噂は聞こえてる」
 昨日のアルフォンスの様子を思い出す。エドワードが帰宅したのは、夜七時を回っていたのだが、アルフォンスが帰っていない。真っ暗な家に帰るのは、普段からあるのだが、アルフォンスが休暇なのに、何故だという疑問が浮かんだ。休日だからといって、アルフォンスが朝から晩まで遊んでくることはない。
 仕方なく、有り合わせのもので夕飯を作ると、アルフォンスが帰宅した。よほどあわてたのか、息が荒い。
「ごめん、兄さん・・・!」
「かえってきたら、ただいま、だろ?」
 血相を変えて飛んで帰ってきた弟に苦笑をもらし、そういうとアルフォンスも、落ち着いたのか、微笑んでただいま、と挨拶をした。
「飯食うか?」
「うん。ごめんね、今日夕飯はちゃんと作ろうと思ったんだけど・・・」
「そんな顔すんなよ」
 エドワードはアルフォンスの眉間の皺を指で弾く。
「おまえの休暇はおまえのもんだろ。どう使おうと、俺は気にしちゃいねえ。それより、コレ運べ」
 ずいっと皿を押し付けて、エドワードは踵をかえした。
 
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