よみもの アルエド(未来軍部)1

□上官監査。
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「エルリック少佐」
「はい」
 アルフォンスは名を呼ばれて、振り向くと、ガネット少尉から、内務課からです、と封筒を手渡された。
「内務課?」
 大部屋には、ガネット少尉とローズ中尉がいるだけだった。大佐であるエドワードは、自分の個人の執務室に篭って仕事をしている・・・はずである。
「なんですか?」
「・・・・。上官監査だって」
「上官監査?っていうことは、エルリック大佐の?」
「そうみたいですね」
「勤務評定をするんですか?」
「ええ。ただ、わたしは身内になってしまうので、ガネット少尉、ローズ中尉。お願いできますか?」
「ええええ!?」
 酷く驚いたのは、ガネットだった。
「できませんよ、わたしには・・・!」
「わたくしも、無理ですよ」
「お願いします。これは命令です」
 そうサワヤカに笑ってみせるアルフォンスに、二人はしぶしぶうなずくしかなかった・・・。

 ○月×日
今日の大佐は・・・。
個人執務室からでてきて、ふらふらと大部屋のデスクにつく。すると、何を思ったのか、紙をペンをだしてきて、なにやら書いている。そして、にっと笑って顔を上げた。
「ガネット少尉」と名を呼ばれて、大佐のデスクに向かうと、その紙には、チェスの作戦が書いてあった。
「このまえ、爺さんにさ、ここでやられたんだよな。お前、どうおもう?」
 じ、爺さん!?って、もしかして・・・あの方ですか?
将軍にむかって爺さんと呼べるのは貴方だけです、大佐・・・!
「は、はあ。わたしはチェスのことはさっぱりで・・・」
「そっか〜。あ〜暇だな〜〜」
 暇なら書類をやってください、といいたいが、わたしではいえるわけがない。
「暇なら書類をやってください!」
 そうはっきりいえるのは、弟でもあり、ある意味最強の少佐、エルリック少佐しかいない。
「あれれ?少佐・・・早いお帰りで・・・」
 外回りをしていた少佐が帰宅して、大佐は額に汗を浮かばせている。
「なんですか、これは!ガネット少尉を巻き込むな!今は仕事中!!」
 大きな仕事がないため、こんなにのんびりしているが、一度テロなどの事件があると、表情が百八十度かわる大佐。だが、事件がないと、いつも少佐にしかられてばかりだ。・・・・このことは調査に書いていいのだろうか??


○月×日
今日の大佐は、朝から本を読んでいるようだ。大部屋のデスクに座ったきり、一度も動いていない。おそらく、読み終わるまで、動くことはないだろう。
 大きな事件がないため、今日も書類に終われる日となるはずだが、大佐は本を読み続けている。「ALCHEMY」と書いてあるので、おそらく錬金術の本なのだろう。そして、少佐はというと、練兵場で銃の扱いを教えにいっているため、昼間すぎまで帰ってこない。
 二人がそろわなければ、会話がなく穏やかで、・・・・静かだ。
「あの、そろそろ休憩に入ってもよろしいでしょうか・・・?」
 わたしがそういっても大佐は答えない。集中しているからだろう。置手紙をして、昼食をとりに食堂へいく。

そして、一時間ほどたってもどってくると、またも同じ格好で大佐が本を読み続けている。
「もどりました」
 そういってもこたえない。そして、その後すぐに少佐がかえってきた。
「お疲れ様です。食事は?」
「ただいま〜。食事は済ませました。・・・・もしかしてあれ、朝からずっと?」
「は、はい・・・」
 少佐の雷が落ちるかも・・・。だが、大声で呼んだところで大佐の意識がこちらにくることはない。だが、さすが弟。大佐を十分理解している。
 少佐は、耳元で囁くように言葉をはいた。
「兄さん」
「うおっ!!おお、アル。今な〜」
 にっこり、少年のような笑顔で大佐が少佐に話しかける。わたしは一瞬、幼いころの二人を見たように思えた。
「そんなキラキラした目でいわないでよね。怒る気が失せるじゃない」
 結局、兄には弱いのかもしれない。
「錬金術入門って、そんな本読みふけってどーすんのさ」
 ええええ!?錬金術入門!?国家錬金術師なら、いまさら初歩を勉強しなくてもいいのに、なぜ、今頃・・・。
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