よみもの アルエド(未来軍部)1

□平和思想家。
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 午後のことだった。
 緊急招集サイレンが鳴り響き、軍靴が右往左往していた。
「『……ただちにブリーフィングルームへ集合せよ。繰り返す、テロリストによる破壊工作発生!ただちにブリーフィングルームへ集合せよ』
 近頃頻繁に行われるテロに、昨夜も遅くまで捜査をしていたエドワードは、少しの合間をぬって仮眠をしていたところをたたき起こされた。疲れた体に鞭打って体を起こす。
「大佐!お疲れのところ申し訳ありません」
 仮眠室にそういって入ることを許されているのは、弟のアルフォンスしかいない。エドワードはああ、と短く返事をしてからベッドから立ち上がった。
「少しは疲れがとれたかな?」
 それは弟としての言葉。
「ああ」
「そういうと思った。そんな顔してないのに」
「じゃあ、聞くな。おまえもそうだろ」
 アルフォンスは肩をすくめてみせたが、エドワードの顔つきが、兄から司令官という顔つきに変わったので、顔を引き締める。
「また、例のテロリストか?」
「ええ。じわりじわりと東方司令部へ向かっている、という大佐の読みどおり、今回は裏通りの小さな居酒屋です。軍人がよく言く、あの……」
「!このまえ行ったところか!?」
 エドワードは一度だけだが、アルフォンスは部下とよくいく居酒屋で、人のいい女将さんが、エドワードのことをカワイイと賞した店だった。
「……はい」
「女将さんは!?無事なのか!?」
「ええ。丁度、買い物にでかけていたようで」
 エドワードはギリリと歯を食いしばっているのがわかり、アルフォンスも眉間に皺を刻んでいる。
 二人は軍靴を鳴らして廊下を闊歩していたが、ふとエドワードが足を止めた。
「このまえ狙われたのは不発だったが国立東方図書館だったよな・・・。それまえは?」
「大佐の気に入っていた専門書を扱う本屋です」
「じゃあ、次こそ、この東方司令部かもしれないな」
「……」
 エドワードは再び足を前にだして、ブリーフィングルームへ入室した。
 大勢の部下を前にして、エドワードは一番前に立つ。その横にはアルフォンス。そして、そのサイドには椅子に座ったガーネット少尉とローズ中尉が座っていた。
「今回は、小さな居酒屋だが、徐々に破壊される場所はここに近づいている。それに、今まで五件のテロ活動で店を壊されるなどしているため、市民の軍への不満が募っている。次に狙われるのはおそらくここ、東方司令部だろう。これはあくまで俺のカンにすぎないが、重々用心するように。テロリストの情報を」
 エドワードがそういうと、アルフォンスが代わりに書面を読む。
「テロリストは、軍に恨みをもった者の集まりである。特徴として、はっきりとした組織性は薄いとみられる。潜伏先というのも、はっきりとした居場所等は確認がとれていないが、総勢二十名ほどだと推測される。
今後の調査も引き続き、エルリック大佐が総指揮をとるのですべての情報を上げてもらいたい。細かな捜査は、それぞれのチームに伝達する」
 チームの長を呼び寄せ、細かな指示をアルフォンスとエドワードが伝える。三十分ほどたったところで、席に着かせて、アルフォンスが兄に目配せする。
エドワードは右手をふいと上げて言った。
「……疲労がピークにきているだろうが、手をぬかずがんばってもらいたい。そして、市民を守り、自分を守ることも忘れるな。以上」
 そういうと、部下の面々は立ち上がり、一斉に敬礼をし、エドワードも敬礼を返した。
 部下がいなくなると、エドワードは、アルフォンスに言った。
「居酒屋のおかみさんとこ行ってくるよ」
「ええ、でも……」
「わかってる、石でもぶつけられるなら本望さ。俺の不甲斐なさがおよんだ出来事だ」
「……わたしも行きます」
 だめだといったところで、この弟はついてくるのだろう。エドワードは苦笑して、ああ、と伝えた。


「ああああ……。わたしの、わたしの店が……」
 いつもはにこやかに接客する、居酒屋の女将も、店のまえで泣き崩れ、憲兵に支えられるようにしてどうにかそこに居た。
「女将さん……」
「!司令官さん!どうして、どうしてうちのみせが……!!」
「ごめん、女将さん……。犯人絶対みつけるからさ」
 エドワードは女将を抱き上げるように支えて、心配そうに顔を覗き込む。
「今日、泊まるところはあるのか?」
「自宅をかねていたからね……。なんにもないさ」
 涙声で、投げやりないいかただった。さらに、眉間に皺をふやしたエドワードは、再び
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