よみもの アルエド(未来軍部)1
□心配するひと、されるひと1.2.3
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1.
「ちょっと!エド!アル!!」
二人は、思わぬ人物の登場に、目を点にしていた。
「…って。ウィンリィ!?どうしたのさ、急に!しかも、ここ東方司令部だし…!」
執務室の重みのあるデスクに座るエドワードも、驚きで何もいえないようだ。
「どうしたのじゃないわよ!あんたたち、いつになったら帰ってくるのよー!」
なにやら、ご立腹のようだ。そこで、はっと現実に戻ってきたエドワードは、
「誰が帰るっていったんだよ!」
「あんたたちが、列車事故で入院したときよ」
「…記憶にねぇな…」
そこで、ウィンリィはエドワードの耳を遠慮なしに引っ張りあげる。
「イデデデ!」
「へえ!東方司令部の優秀な司令官殿の記憶には残らなかったのでしょうかねぇ」
「わかった、わかった!」
苦笑したアルフォンスは、でも時間がなかったんだよ、と話す。
「だとおもって、このウィンリィちゃんが、貴方たちに会いにきてやったのよ!ありがたくおもいなさいよ」
「へーへー。でも、まだ俺たちかえれないぜ?」
「いいわよ、まってる」
アルフォンスと、エドワードは苦笑しつつお互い向き合っていた。
「失礼します」
ガネット少尉が書類をもちつつ、エドワードになにやら話している。それを、執務室のソファに座って眺めるウィンリィ。
「またお小言か?あの無能…」
「いえ、今日の夕刻に二名の大尉が到着するとのことでした。名前は、ハボック大尉、ブレダ大尉」
「大尉たちが?なんで?」
「いえ、内容は聞いておりません」
「わかった。到着しだいここに呼んでくれよ」
「了解」
ガネットは律儀に敬礼をするが、エドワードははいはいと、右手を振るだけだった。
「あんたさ〜、せっかく生身の腕があるんだから、敬礼くらいしたら?」
「うるせーな。そんなこといいにきたのか?…っと、少佐。この書類ダメだってゆっといて」
「?何か間違いが?」
「いや、完璧すぎてて、正攻法では行きにくい。上に突っ込まれるから、ある程度隠す方向で」
「はい。つくり直します」
アルフォンスは、その書類をもってその部屋を退室していった。
「あんた、ほんとに司令官なのねぇ〜」
へんに関心するウィンリィに、ああ?と顔をあげる。
「書類見るだけの、中間管理職だよ。錬金術なんて何の関係もない」
「へえ、でも、錬金術取ったら何にも残らなかった昔とくらべて、書類が捌けるようになったんだから、成長じゃない?」
「うるっせーな!おまえ、出てけよな」
「何よ〜!田舎から出てきたってのに!!」
「ったく。だったらおとなしくしてろ!」
べ〜と舌を出すウィンリィにちっと舌打ちをし、エドワードは再び書類を読み始める。
すると、執務室の電話が鳴り、二名の大尉が到着したことを告げた。
「通して」
そういうと、すぐに、ハボックとブレダが執務室に顔を覗かせた。
「よお〜大将」
「久しぶりだな〜ハボック大尉、ブレダ大尉!」
相変わらず、茫洋とした雰囲気で、咥え煙草がトレードマークのハボックと、大柄なブレダがニヤリと笑った。
「執務室にオンナ連れ込むなんて、やるじゃないか、大将」
「だーれが連れ込むかー!!ウィンリィを忘れたのかッ!」
叫ぶエドワードを無視して、ハボックとブレダ、そしてウィンリィは久しぶりの挨拶を交わし、にこやかだった。
「ったく…。それで?何の用事?」
「ああ」
そこで、ハボックとブレダの顔つきが変わった。キリリと軍人の顔に変化したのだった。
「エルリック少佐に、セントラルへの帰還命令が出されました。そして、すぐさま南の前線へと配属となります」
「…!!」
エドワードは、金の目を大きく見開いた。
…アルが…
前線送り……!?
「ちょ、待てよ。それは、少将の命令か?」
「ああ。これでも、がんばったんだ」
少将よりも上の将軍からの要請だったのだろう。その言葉から、わかるし、少将の直属の部下がそういうのだ。上との攻防を繰り広げてくれたのだろう。