よみもの アルエド(未来軍部)1

□心配するひと、される人5.6
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5.

「エード!エドったら!起きなさいよ!!」
 朝早く、東方司令部のエルリック邸から、ドンドンとドアを叩く音が響き渡った。
 玄関扉ではなく、エドワードの寝室の扉だ。
 
「うるせーよ…ウィンリィ…」
 小声でそういったにも関わらず、ウィンリィが寝室の扉を勢いよく開けて、仁王立ちした。
「なんですって!?この天才機械鎧技師のウィンリィちゃんがあんただけのために、こうして朝食つくりにきてやってるってゆうのに!!」
耳を突き刺す大声に、エドワードは苦笑を漏らした。
「わーった、わーった。今いくから、出てけよ」
「早くきてよね」
 ウィンリィが出て行ったことを確認し、エドワードはふと窓の外をみる。
 太陽が神々しく輝いて、世界の始まりを告げていた。
「…おはよ。アル」
 光が、エドワードの胸を照らす。そこには、鎖でつながれた指輪が銀に光っていた。
 この、指輪はアルフォンスが誕生日にくれたもの。それに、そっと口付けた。

アルフォンスが東方司令部を去ってから、二ヶ月がたとうとしている。いちど、セントラルに戻り一週間後に南方司令部のほうへ移動したときいた。その後の連絡がないため、前線基地についたのか、どうしているのかさっぱりわからない。

エドワードは、こちらから連絡を取ろうとしなかった。それはなぜだか分からないが、ウィンリィがたずねても曖昧にこたえるだけなのだ。
 
 エドワードは、ふっと息をはいてから、軍服のアンダーに着用するシャツに袖を通す。着替え終わると、ジャケットだけは脇にかかえ、階下へ降りていった。
 洗顔等を終えて、キッチンへ行くなり、眉間に皺がよるエドワード。
「…これは毎日嫌味なのか?」
 エドワードが毎日うんざりする飲み物。
「飲め❤」
 語尾にハートマークをつけた笑みも、エドワードには効かず、睨めつける。
「こんなものが飲めるかー!!」
「なんですって〜!?この私が丹精こめて注いだ牛乳が飲めないっていうのっ!」
 ぎゅむ〜と頬を抓られたエドワードには、司令官としての威厳がみあたらなかった。
「アルは、出さなかった!」
「アルは甘いのよ!」
 どっちも引かないにらみ合いが続くが、ボーンと時計の音でふと、われに返ったエドワード。
「げっ!遅刻じゃねーかよっ!!」
「だから、早くしろっていったでしょう!?」
「うっせーよ!」
 エドワードはスクランブルエッグを食パンにのせて頬張り、ばたばたと走り出した。
「いってくるから。鍵しめとけよ!そんで、今日は帰らないからおまえも来なくていいから」
「はいはい。いってらっしゃい」
 ウィンリィは、嵐がさった後、ふうとため息をついた。
「アルの後釜も大変だわ」
 アルと比べられちゃあ、後妻だったら切れてるわよ。
 などと、つぶやく。
「…泣いてたんだろうな」
 明るくふるまっているウィンリィだが、エドワードの涙の後を毎日、みつける。頬に乾いた涙の後を見るときもあるし、酷いときは目が腫れていたりもする。
「連絡くらい寄越しなさいよ、バカアル」
 ウィンリィは、食卓に残ったサラダのトマトを口に放り込んだ。


「おはようございます、大佐」
 振り向くと、ハボックが咥え煙草をくゆらせて、立っていた。
「なんだよ、キモチワルイ」
「キモチワルイはないだろ。たまには正式に呼んでやらねーと」
「いらねえよ」
 エドワードは、そのままツカツカと廊下を闊歩する。
「少将から、連絡が入って」
「うん」
「アルに連絡が取れないという連絡だった」
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