よみもの アルエド(未来軍部)1

□心配するひと、されるひと7
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7.
 兄さん…無事なの?
 一人、仮眠室でアルフォンスは、兄の無事を願う。
 アエルゴ側の人間との話をする場を設けた。明日の朝、大総統閣下が到着し、無事にすめば条約を結ぶことになるだろう。
 条約も大切だが、アルフォンスにとって、唯一無二の存在は、兄のエドワードだけ。
早く、終わればいのに。
それだけを、常に願っていた。

これだけ、長い夜を過ごすのは、鎧の時以来かもしれない。兄といる夜はいつも短くて、足りないもどかしさを感じてきた。それは、幼いころから。ただ単純に錬金術の勉強をしてきたあの時もそう。そして、家族とは違った関係を結んだ今もそう。
怒ったり、笑ったり、時には涙をみせたり。
表情をコロコロと変える彼が、今どんな表情で、どうしているのかが分からない不安。
撃たれたと聞いた。
考えると恐ろしい。
体の芯から冷える、寒気が走った。

兄のぬくもりを、覚えているのは記憶だけ。もう、身体は覚えていない。


会いたい。
会って抱きしめたい。
声が聞きたい。
笑顔が見たい。
名を呼んで欲しい。

だけど、適わない現実。
「兄さん……」
 アルフォンスは、頭を抱えた。
コンコン。
 仮眠室の扉をノックする音が聞こえ、ふと顔を上げる。
「はい」
 顔を覗かせたのは、ブレダだった。
「おい、聞いたぜ。大将のこと」
 アルフォンスは薄く笑うと、視線を下げた。
「どうしてるんでしょう、兄は…」
 アルフォンスの心痛な面持ちを見たブレダは、大きくため息をついた。
「明日、会議が終わり次第、大総統と帰還することになった。おまえだけ」
「!ほ、本当ですか!?まだ、事後処理が残ってるんですが」
「仕方ね〜から、俺がやっとくよ。まあ、事後処理といっても、お前が残すようなことはそうそうないだろうから、俺でも出来ると思うからな」
「ありがとうございます!!」
 アルフォンスは、顔をあげてブレダに頭を下げる。深々と。
「だから、今日は明日にそなえて早く寝ろ。明後日には、東方司令部につけるだろうから」
「はい!本当にありがとうございます!!」
 ブレダは、ニッと笑って、退室していった。
 「明後日には、会えるかもしれない…!」
 微かな希望が出てきて、アルフォンスは両頬を叩いて気を引き締めた。
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