toy ring

□toy ring 2
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「真面目で通ってるもんね、キミの弟。あ、でも二股報道あったっけ?ははは。でも、これからはイメージがダイジダイジ♪」
 エンヴィは、にやっと笑って、去っていった。
「オレが…モデル?」
 何を考えてるんだ、あいつ…。

 
 エドワードは、アルフォンスに相談しようかとも思ったが、なんとなく言い出すことができずに、打ち合わせがあると言って、アルフォンスとは別行動をとった。
 アルフォンスは、おそらく、家に帰っているだろうが、エドワードは指定されたバーに向かった。
 
 薄暗い店内に入ると、カウンターに黒髪のひとりの男が座っている。
「…お、来たな。さすが、弟のこととなると、決断が早いね〜」
「…あたりまえだ。でも、おまえ目腐ってるんじゃない?どんなモデルかは知らないけどさ、俺にできるわけないだろ?アレにだって才能がいることは知ってるぜ、俺でも」
 エンヴィの目が、きらり、と光るような気がした。獣が狙ったえさのように、エドワードは動けなくなる。
「まあ、座んなよ。何を呑む?」
「…ジントニック」
「んじゃ、それで」
 バーテンダーに注文すると、エンヴィは、座るように椅子を引いた。そこにエドワードが腰を下ろすと、エンヴィがくくっと声を抑えて笑った。
「…んだよ」
「そう、ビクビクすんなよ」
「何を考えてるか分からないヤツを警戒して何が悪い。それに、モデルとかいって、いろんな雑誌があるからな」
「そうだね〜あんたなら、ェロ雑誌飾っても、いいね」
 エドワードは眉間に皺を寄せて、睨みつけた。
「なんて、オレはそんな仕事しちゃいないぜ。一応アーティストだ。おまえが、モデルとして、3レベルなら、それを10にまで上げてやろう。おまえの良さをそこまで引き上げてやろうっていうんだ」
「は、女じゃねえんだ。そんな言葉で、その気になるか」
「オチないか。こんな文句じゃ…」
 エンヴィは、ニッと笑ってぱさ、っと一冊の雑誌をエドワードに見せる。
「…おまえ、この雑誌」
「お、けっこう知ってるな。そう、ニューヨークでサイコウ部数を記録した写真雑誌。俺は、それの巻頭を担当してる。今回、日本に場を移したんで、同時に新雑誌を作ることを計画している。おまえを、専属として受け入れる」
「じゃあ、おまえが、編集するのか」
「ああ。編集長兼カメラマン兼ライターってことかな」
「……。失敗したらとんでもないな」
「ああ。そうだな」
「オレを専属だなんて、おまえチャレンジャーだよな。こんな素人」
「はははは!そうかもしれないな。だが、おまえを引き込んだら、アルフォンスも入ってくれるんじゃね?」
「アルが目的なら…」
「いや、違うな。アルフォンスがメインじゃない。おまえがメインモデルだ」
「――ッ!」
「考える余地はやらないぜ。まずはためしだ。来いよ」
「?」
 注文した飲み物さえ、口につけるヒマなく、エンヴィは立ち上がって、スタスタと店の奥に入っていく。エドワードもあわててその後をおった。一枚の扉を隔てて、そこはバーではなく、一転してスタジオとなっていた。
「すげェ…」
「オレの、仕事場」
 カメラや撮影に使う道具が一式揃っている。そこに、女性がひとりたっている。
「彼女はラスト。メイクや衣装を担当する」
「え、はあ…」
「よろしくネ」
 色気のある女性だな、とエドワードは思ったが、すぐに着替えるように言われて、はあ?と戸惑う。
「ちょ、今!?」
「当たり前だ。そんなに抵抗ない服装だから、早くしろ」
「なんだよ、それ…」

 確かに着替えろといわれた服装は、アイボリーのボトムに白のシャツだ。
 よくわからないまま、着替えると、ラストという女性にメイクらしいことをされて、え?え?と思う前に、白い場所に座らされた。ただ、しろの布があるだけの場所だ。そこに座らされて、ラストに梳かれた髪を結ぶことなくたらしたまま、その耳に赤い薔薇を飾られた。
「視線は下だ」
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