toy ring

□toy ring 3
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 その夜、アルフォンスがどうしてもついていく、というので、エドワードは渋々承諾し、ふたりでバー『Fullmetal』へ向かった。
 すみの一角に、エンヴィとラストが座っている。そこにもうひとり男が居た。
「よお、エド」
「あ!おまえ!」
 アルフォンスが、え?知ってるの?という顔でエドワードを見ている。
「昼間はドウモ」
 エドワードとアルフォンスが座ると、エンヴィが話を続けた。
「今回は絡みあり」
「か、絡み!?」
 エドワードが素っ頓狂な声を上げるので、エンヴィとラストがくすり、と笑った。
「今回は、和風テイスト。おまえがこの着物とこの着物を着る。グリードがこれ」
「着物でカラミって意味わかんね〜」
「アレだよ、アレ。なんだっけ?お代官様〜のグルグル〜ってヤツ」
「はあっ?」
「帯をお代官様がぐるぐるとって行くやつだよ」
 エンヴィの仕草に、アルフォンスとエドワードには、殿様らしきキラキラの着物を着た男が、女の帯を『よいではないか、よいではないか』とにやつきながらはぐっていく姿を思いつき、アルフォンスがぷっと吹き出した。
「ええええ!?本気でいってんの!?」
「あははは。そこまでマジじゃね〜よ。おまえ、女物の着物と、男物両方着るから」
 エンヴィが着物の写真を数点エドワードの前においた。
「へえ、カワイイじゃない」
 アルフォンスがエドワードの手元の写真を覗き込んだ。
「ホンキでいってる?俺に似合うと思うのかよ」
「似合うよ、絶対」
 にこっと微笑まれて、エドワードは赤面する。
「そうかな…」
 アルフォンスに、絶対といわれては、言い返せない。エドワードは、はにかんでアルフォンスを見た。
 
 店の扉の鈴がカランとなって、「グリードさん」と大柄な男が大きな木箱を持ってきた。
グリードが「おう」と返事をしてその木箱を店の裏に運ばせている。
「お、丁度よかったじゃん。衣装が届いたみたいだぜ。ためしに何枚か撮っとくか」
 嫌がる理由はないが、エドワードはアルフォンスがいる前なので、なるべくなら撮りたくない。
「でもさ…」
 渋ると、アルフォンスがぽんとエドワードの肩に手を置いた。
「いいじゃない。僕もキレイな兄さんみたいな」
「っ…」
 カッ赤面して、エドワードは渋々頷いた。


 紫の布地に、菊の花をあしらった豪華な着物に袖を通して髪をアップにされた。
そして、女性用の化粧を施されているエドワード。口紅を塗ってもらうために、薄く開いた唇と、蕩けるような瞳の横顔に、アルフォンスは、とくん、と胸が鳴る。
 
エドワードの準備が終わると、背中からカメラを構えるエンヴィ。エドワードの顔は横顔で、憂いを帯びた表情だった。
適当にポーズをとって、正面なども撮りおわると、男性用のシックな着物を着たグリードが横に並ぶ。
だらりと垂れ下がるような結び方のエドワード帯にそっと手をかけるような形だ。そっと、帯のあたりに左手をそえられ、二人は向き合った。
「ちょお、近いって!」
「絡みってこんなもんだろうが」
 二人が話すと、「こら!エド!顔作れ!」とエンヴィの怒号がとんだ。
「ちくしょー…」
 微かに赤面して、だけど、背を反らせるエドワード。さらに顔を近づけるグリード。まるで、ダンスをしているようだ。
「ったくよ、おまえら!真面目にヤレ!」
「まじめだっ!」
「グリード、脱がしちまえ!」
 エンヴィの声に、目を丸くして、ぎゃ〜っ!と頓狂な声で逃げる。グリードは可笑しそうに、帯を解いていく。
「ちょ、エンヴィー!ありえない!ちょ、ストップっ!」
「たく、なんだよ。ああ、そうか。アルフォンスがいるからハズカシイのか」
「ち、ちがッ!」
「僕なら気にしてないよ、兄さん」
「気にしろ!おまえ、兄が襲われてるのに、気にしろ!」
「だって、撮影じゃん」
「さすが、今一番の売れっ子俳優さんは分かってるね〜。大人しくヤられろ!」
「にぎゃ〜〜〜〜!!」
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