toy ring

□toy ring 5
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 エドワードを社長室に呼ぶと、何の抵抗もなく彼はやってきた。これから話すことなど微塵も知ることなく。
 だが、話した途端。
「…良く聞こえないな」
「…おまえはいつから耳が遠くなった」
「俺は、モデルの『ed』じゃねえ」
「聞こえてるじゃね〜か…」
 ぼそ、っと呟いた言葉をエドワードは無視して、そっぽをむいた。
「そんな話なら、俺行くから。アル待たせてるし」
「そうだな。休暇をやろう」
「――は?」
「二週間どどん!と。アルも含め」
「…まさか」
「マジ。だから、この映画を受けろ」
「それとこれとは別だね。だいたい、俺は役者な器じゃねえ。演技なんてムリ!モデルは、エンヴィがうまくカバーしてくれてるが、そういうわけにはいかねえだろ、役者は」
「まあ、そういわずに、草稿だけでも読んでくれよ」
「もし、俺がその映画に出て、赤字だったとしても、俺は責任とれない。それに、俺のことバレたら、マネージャーができなくなる。だから、断る!」
「エド〜!俺を助けると思って!頼む!」
 急に拝みだしたヒューズを睨めつけて、つんとそっぽをむいた。
「あんた、卑怯だ。俺たちが、あんたの恩を返してないから、そうやって…」
「頼むよ〜エド」
「でもやらない」
「…ちぇ」
 ヒューズは知っている。一度やらないと決めたら、絶対に受けるはずがない。鶴の一声がないかぎり…。
 お、鶴の一声!?いるじゃねえか、こいつには『鶴』が!
 急に、ぱあっと表情が変わったヒューズをいぶかしむように覗くエドワードだったが、帰っていいといわれて、その部屋を退室していった。
 そのエドワードに笑顔で手をふり、姿が見えなくなった途端に、携帯電話をとりだした。
「…アルか?」
 そう、相手は、アルフォンスだった。


「ただいま〜」
 夜にモデル『ed』としての撮影があったため、夜中に帰宅したエドワード。もっとも、もう起きていないだろうと思ったが、アルフォンスはおかえり、とソファに座ったまま声をかけた。
「まだおきてたのか。明日は、午後から収録だからいいものの、ゆっくり休めよ?」
「うん。ねえ、兄さん。ハナシがあるんだけど」
「…え?」
 一瞬ドキリ、とした。

 改まってアルフォンスが言う話?
 心臓が勝手に早くなる。
「な、何…?え、まさか」
 好きな人ができたとか言わないよな!?
「うん、そのまさか」
「え、ヤダよ、俺…」
「え、まだ何も言ってないじゃない」
「だって、そんな改まって言うことなんて、他に好きな人ができたとか…」
 ひきつった顔でそこまで言うと、アルフォンスはぷっと吹き出して笑い出す。
「あはは!何を言ってるのかとおもったら!違うよ、僕のことじゃない。貴方の今後のことだ」
「え?」
 呆然と立つエドワードに、アルフォンスが横に座るように促した。

 アイボリーのソファに座ると、アルフォンスはエドワードの手をやさしく包み込む。
「映画の話があるんだって?」
「――な…なんでおまえ知ってるの?」
「聞いたんだ。社長から」
 ち、っと小さく舌打ちすると、エドワードはアルフォンスから顔をそらした。
「俺は、出るつもりはない。演技なんて俺にはムリだし、『toy』のことで精一杯だし、それに、おまえのマネージャー業を辞めるつもりは微塵もない」
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