よみもの アルエド(未来軍部)2

□エルリック大佐誘拐事件(後編)
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「ッ…」
 軍服のジャケットと、シャツが切られて、エドワードの胸が露になっているのを、男たちはにやり、と粘つく笑顔を張り付かせた。
 つつ…と胸の真ん中から血が流れる。浅い傷のために、酷い痛みはない。
「思ったよりもキレイな身体してんじゃん、司令官さん」
 エドワードは無言で睨みつける。
 だが、男の手が遠慮なくその傷に触れて、血が指に絡んだまま、エドワードの胸の珊瑚色の飾りに触れた。 
 キモチワルイ。
 エドワードの思考はただそれだけだ。
 与えられる不快な感覚を、耐えるので精一杯だった。唇を噛んで、無駄だと知りつつも、手を縄からはずそうと引っ張る。皮膚と縄がすれるので、そこからも痛みがひろがった。
「ッ!」
 ピクっと身体がはねるのを、男はふっと笑う。
「ココ、か」
 執拗に嬲られ、気に入らない人間に触られるという不快さに、エドワードは耐えられない。
 唯一動かせる足を上げて、男、フウの股間を狙って蹴り上げた。
 だが、反対にフウに足を蹴らた。
「クッ」
「自分の立場分かってんのか、司令官さんよ」
「こ、こんなことして、おまえらに何の得がある?どうせ、おまえらは捨て駒だ。おまえの上に立つ人間がヨロコブだけだな」
「いつまでその生意気な口がたたけるかな」
 フウがエドワードのベルトに手をかけた――。



 現場にきたアルフォンスとガネットは、車の轍を発見した。いくつかあるのだが、ガネットが車の方向を思い出して、一本に絞った。
「ここから、北方向ですね」
「工場跡地が何件かありましたよね、この先」
 アルフォンスはガネット共に、車に乗り込み北へむかった。
 保障はない。だけど、今はそれにかけるしかないのだ。
 
 無事でいて…
 アルフォンスの願いはそれだけだった。


「ここでタイヤの跡が終わっていますね、中佐」
 アルフォンスは無言で頷いた。
 そこは、工場として使っていたのは、数年まえ。今はもう、廃墟と化している。
窓ガラスが一枚しかない。アルフォンスは音を立てず窓ガラスから、覗き込んだ。ガネットは、拳銃をかまえて、ドアに張り付いた。
 男が見える。黒い憲兵の服だ。
その影にかくれて、男が膝をついた状態でにやりと笑ったのが見えた。
その、視線は――。
(兄さん!!)
 同時に、アルフォンスの頭にかっと血が上るのを感じた。
 こういうときこそ、冷静に。そうは思うのだが、怒りは抑えられない。だが、中をみるかぎり、ふたりしかいない。
 拳銃をもっていたとしても…。アルフォンスの中に、計画が浮かび上がった。
(といって、僕もあの兄の弟だよ…)
 こそこそするのは楽しくない。
 正面切って向かうのは兄の仕事だ。だが、それについていくのは弟の仕事で。
 アルフォンスは、ふう、と一つおおきなため息をついた。
 
 アルフォンスはガネットに近づき、こそ、っと話した。
 ガネットは頷き、次の瞬間その扉を蹴り飛ばした。

「誰だ!?」
 男たちは一斉に扉のほうを向いた。暗い工場内は、逆光で誰だかわからないが、唯一、エドワードにはわかった。
「…アル…」
 ガネットが銃で憲兵の服をきたライの腕を打ち抜き、倒れる。と、同時にアルフォンスはエドワードに触れていた男、フウを殴り倒していた。
「ッ!」
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