よみもの アルエド(未来軍部)1

□栄転?
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そんなこんなで、移転準備をしている期間、廊下を歩いているとき、ふと視線を感じることが多くなった。今もそうだ。なんだか、視線を感じる。
 ふと振り向くと、横にいたアルが
「どうしたの?」
 と聞くが、やぱりなんの気配もない。まあ、俺より危険を察知するのがはやいアルが気がつかないなら、なんでもないだろうけど。
 いや、なんでもない、と言おうとした刹那、ぐっと頭を押さえつけられて、床に額をぶつけた。
「いてえ」
 パン、ガシャン!
 廊下の窓ガラスが割れる音、そして俺に覆いかぶさるようにして、アルがいたので驚いた。
「アル!」
 アルの背中にガラスの破片が散らばり、アルが起き上がるとその破片がきらりと光りながらも落ちていく。
「大丈夫?兄さん」
「俺はぜんぜん平気だよ!おまえは!?」
 ふとアルの手の甲からの流血に気がつき、俺の頭に血が上るのがわかった。
「ちくしょー!誰だ!!」
 割れた窓のほうをみると、ごろりと瓶が転がっていた。その中には紙が収められている。
「兄さん。これ」
 いち早くアルがその瓶を拾い、手紙を読む。そして、そのまま俺にわたした。
それには、「エルリック大佐をもらう」の一言が書いてあった。
「ん、のやろーおおおお、だれだーっ」
 窓をのぞいても誰もいない。
「俺は物じゃねー!」
 兄の叫びを半分無視し、アルは冷静に窓ガラスを元通りに錬成していた。ガラスの音を聞いて駆けつけたそのへんの軍人が集まってきていて、その中でホークアイ少佐が声をかけた。
「どうしたの?」
「ホークアイ少佐、コレを」
 アルが手早く先ほどの手紙を渡し、事情を説明する。だが、おれはそんなものよりも、気になっていることがある。
「後で報告すっからさ、アルのこれ手当てしてくるのが先だ」
 有無をいわせず、おれはアルの腕を引っ張って医務室に連れて行った。
「なんで庇うんだよ、おまえ」
「あのねー、上官を庇って何でしかられなきゃいけないわけ?上官じゃなくても、僕は兄さんだから庇ったんだけど、でもあれが爆発物だったら兄さん死んでたよ」
「おまえが死んでただろうが!バカアル!」
「いいじゃないか、僕が守りたいと思ったから庇ったまでだよ。兄さんにそういわれる筋合いはないね。それに、命令だとしても聞かないからね」
「・・・嫌なんだよ。おまえが俺のせいで怪我すんの」
 あーなんか涙でそう・・・。そう思い、そんな顔をアルに見せることができなくて、顔を下げた。だけど、手当てだけはしなければ、と思い消毒をしてガーゼを当てた。ひどく切ったわけじゃなさそうだが、血が白いガーゼを侵食していく。
 すると、はあ、とアルのため息が聞こえた。
「ごめんね、兄さん」
「なんで謝るんだよ・・・」
「勝手に、怪我して、守って、ごめん」
「・・・・」
「貴方の強さは僕が一番よくしってる。だけど、危ういことも知ってる。だから、貴方を守りたいと思うこの気持ちを、許して」
 たぶん、いま。俺は顔を真っ赤に染めているだろう。顔が上げられないまま、俺はアルの怪我をしている左手を改めて握る。
「俺だって、お前を守りたいと思っているんだ。たしかに、体術はおまえのほうが優れているだろうけど、その気持ちも分かってくれてるってことだよな」
 それは、兄として。
そして、おまえを、アルフォンス・エルリックを一番愛する者として・・・。 
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