よみもの アルエド(未来軍部)1

□バレンタインデーには…
3ページ/3ページ

顔をつぶされそうになり、文句を一つこぼす。
「苦しい」
「ゴメン。でも、どうしてマーガレットなの?」
「おまえとは、思いが通じているから、せめて誠実さを見せたくて・・・」
 赤面したエドワードだったが、アルフォンスはその思いに、目頭が熱くなる。
「アル?」 
 急に肩口に顔を寄せてきた弟の頭に手をのせた。
「なんか、泣きそう・・」
「ばか、泣くな!」
「だって、うれしいんだもん」
「・・・・・・。たくさんもらっても、俺があげるのはたった一人だからな」
「うん・・・。ありがとう、兄さん」
「あ、そんで、今の電話は?」
 アルフォンスは、明らかに動揺した表情になり、思わず口ごもってしまった。
「だ、だからお誘いの電話だって・・・」
「誰から?」
「えっと、誰だったかな・・・」
 エドワードはずいっと弟の顔に近づけた。
「嘘ついてる顔」
「う・・・」
 さらに金の目で見上げてくる顔を、押し返せなくて、アルフォンスは両手をあげた。

「降参。実は・・・兄さんにお誘いの電話・・・だったんだ・・・。ごめんなさい」
 眉尻を下げて謝る姿は、幼いころとまったくかわらない。
「勝手に断ったワケ?」
「ごめんなさい・・・。僕は、兄さんがモテることがすごく気に入らない」
「なんで?」
「貴方を独り占めしたいと思ってるから。わがままだって分かってるだけど、どうしても譲れない・・・。兄さんを僕だけのものでいてほしいから・・・」

 エドワードは、はあっと息をはいて、今にも泣き出しそうな顔に手を伸ばす。
「俺も断れる。っていうか、断るにきまってるだろ?俺はおまえがモテルことは自慢だ。でも、マメにそれに対応しているおまえみると、ムカつく。そんなの、ほっとけっていいたくなる。だけど、それもおまえなんだよな」
「・・・」
「ま、許すけどな」
「じゃあ、僕も質問していい?さっき玄関にいたとき、どうして赤面していたの?」
「うっ・・・それは・・」
「それは?」
「キ・・・キスされた。いや、不意に」
「エネル大尉だね」
「・・・うん・・・。スキがあれば奪いにいくと、アルに伝えろって・・・」
「戦線布告!?」
「でも、でも俺は絶対、アルしか選ばないから!選べないっていうか・・・」
 必死で小動物みたいな表情をし、すがるので、アルフォンスはクスっと微笑んだ。
「うん。知ってるよ」
 ふたりはそっと口付けをかわし、くすっと笑う。
「ご飯たべよ。そして、一緒にお風呂入って、一緒に寝よっか」
 にこやかなアルフォンスの顔と対照的に、エドワードの顔は真っ赤に染まり、うつむく。だけど、微かに頷いた。
 ☆
「おはようございます!エネル大尉」
 朝からさわやかな笑みで、アルフォンスは廊下で出会ったエネルに声をかけた。
「お・・・、おはようございます、エルリック少佐。大佐は?」
「少し遅刻します。昨夜、書類不備がみつかったもので、夜遅くまで作業していたんです」
「・・・。うそくせ・・・」
「何か?」
「い、いいえ。では」
 エネルは敬礼をすると、さっさと立ち去ろうとした。だが、
「あ、大尉。兄への昨日の貸しは、いつお返し願えるのでしょうか」
 笑みを崩さないアルフォンスに、エネルは背筋が凍る思いだった。
「いずれ、そのうち」
 それだけしかいえない自分。とんでもないヤツをライバルにしちまった、と後悔していたエネルだった。
「勝ち目ないんだから、手をだすなよな・・・」
 去った後に悪態をつく、アルフォンス。だが、すぐに最愛の兄を思いだし、 そろそろ、電話して起こさないと、昼まで寝てるかもな、と考え執務室へ向かった。
 昨日はやりすぎたかも。そう後悔したが、でも半分は兄さんの責任だから仕方ない。そう思いつつ、受話器を手にするアルフォンスだった。
 

オマケ☆
「・・・・はい、エルリック・・・」
『わ、酷い声だね、兄さん』
「だれの責任じゃ!ボケ!」
『僕半分、かわいい事言う兄さんが半分ってとこかな〜』
「なんだと〜って、そこ執務室だろ!?誰か聞いてるんじゃ・・・!」
『さあね。そろそろこっち向かってほしいんだけど』
「おまえね、動けないんだってば!」
『迎えをよこすよ』
「・・・職権乱用・・・」
『エネル大尉を向かわせる。もう、変なことしないと思うから』
「・・・・はあい・・・(アルのやつ、何かいったな)」
 エドワードの脳裏に、笑顔をはりつかせたアルフォンスが浮かんだ。そして、その笑顔の裏にある黒いモヤに、エドワードは背筋を凍らせた。

 オワリ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ