よみもの アルエド(未来軍部)1

□ヒカリ
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「そうですか・・・・。すみませんでした」
 落胆した声でアルフォンスは電話を切る。
「見事な演技ですね、少佐」
「あはは」
 アルフォンスはローズにはそう笑っていたが、内心は穏やかじゃない。入院していたという事実が分かったのだ。それに、いました、と過去で相手はいっていたとなると、すでに退院している。兄に問い詰めても、弟に心配させまいと思い、絶対に言わないだろう。
「ローズ中尉。少しお話が。ガネット少尉を呼んでください」
 いつもはエドワードが座る執務室の椅子。今は臨時に彼が座っている。そこへ、ローズとガネットが二人そろってやってきた。とどうじに、なぜかこういうときにおいを嗅ぎ付けるのか、エネル大尉がやってくる。
「大尉は呼んでませんが」
「いいじゃねーかよ、少佐」
 にっと笑って気にしていないエネルがそれで?と切り出した。
「今日の夜行で大佐を迎えにいってきます。もしかして、このまま研究所に送り込まれてしまう可能性がでてきました。まだまだ彼にはここでの仕事が残っています」
「しかし、上からの命令であれば、従うしか・・・」
「正式に命令は出ていません。ですから、僕が直に迎えにいってきます。留守をお願いしたいんです。僕は後四時間でいまあるこの仕事を片付けます。そして、オワリしだい、中央へ向かいます。そして、始発に乗って帰りますので」
「将軍がいらっしゃったらなんと言えば・・・?」
「ごまかしてください。その役はガネット少尉では難しいので、ローズ少尉に任せます。エネル大尉は、そうですね。通常任務を」
 エネルはにっと笑って、
「通常、でいいんだな?よし、エドワード奪還計画スタートだ」
「勝手に名づけないでくださいッ。では、お願いします」
 三人は一斉に、きびすをカツンと鳴らし、敬礼をした。
 エネルには、通常といったが、彼はエドワードの隠密で動く部下だ。だから、怪しい動きがあったら、即連絡しろと言っていることを理解していた。飄々としているが、エネルは信頼におけることをアルフォンスは知っている。もっとも、一時期エネルとエドワードの間を怪しんでいたこともあったが、エネルからエドワードへの好意はあるが、エドワードからの気持ちは信頼しかないことを理解した。


 セントラルシティにつき、早速研究所に向かったアルフォンスは、夜中だというのに、研究員らしき人間を見つけた。あまり行ったことがないため、アルフォンス一人で兄を探すのは難しい。研究員は、亜麻色の髪の女性だった。
「あの、エルリック大佐が研究している部屋、ご存知ですか?」
「あら、もしかしてエルリック少佐ですか?大佐ならあそこの光が漏れている場所で研究を行っていると思いますよ」
「ありがとうございます」
 アルフォンスは素直にお礼をいい、その部屋に向かった。

「くそ、後少しなんだよな!」
 エドワードは、昨日の朝から今日の午前中まで、病院にいたのだが、そのあとすぐに研究所に戻り研究を続けていた。昨日の朝、一週間ろくに眠らず研究に没頭していたら、急にめまいがして意識をなくした。気が付けば、病院で、まるっと一日ねたら、すっきりしたので再び研究をしていたのだ。
 弟のアルフォンスがいれば、決してこのようなことはない。以前、旅をしているときは不眠不休などあたりまえだったのだが、腰をすえて仕事をするようになってからは、多忙のため不眠不休となることはあるが、倒れるまではいかない。倒れるまえに、ころあいをみて、アルフォンスが休憩をとらせるからだ。
 もう空は漆黒の闇から群青色へと変わりつつある。もう入院も昨日ということになっていた。
 エドワードがスラスラと鉛筆でなにやら書き、「あ、そうか・・・」とつぶやきつつ錬成陣を書いていた。
「ひゃッ・・・・!」
 急に目元が暗くなった。目を覆われたようで、それがとてもつめたい。
「いい加減にしてよ?」
 耳ともでささやくような、低い声。聞きなれた、優しい声・・・。いや、そんなはずがない。ここは中央だ。彼がいるはずがない。
「兄さん」
 間違いない。自分をそう呼ぶのは、呼んでいいのは、弟しかいない。
「お、おま・・・!おまえどうして・・・!」
 魚のように口をパクパクさせて、エドワードは驚いてアルフォンスを見た。
「迎えにきたよ、兄さん」
「迎えって、司令部はどうした!?」
「大丈夫、始発で帰るから。もちろん、兄さんも一緒にね」
「俺はまだ、研究が残ってるし、あと三日くれよ!」
 アルフォンスは大きなため息をついた。
「少将と同じことを言うんだね」
「・・・・アル・・・」
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