よみもの アルエド(未来軍部)1

□ゆきの舞う日
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 サボリかよ、と心で毒づくが、顔には出さず、ため息だけこぼした。
「すみません、私がいこうとしたのですが・・・」
「ああ。気にしないで。大佐はああいうの、好きで首突っ込んでるんで」
「でも、お気を悪くしてないかしら、大佐」
「どういうことですか?」
「実は・・・女の子、ニーナちゃんっていうんですけど、大佐のことをお姉ちゃんって言っていて」
 女性下仕官はクスっとすこし笑っていたが、アルフォンスは眉間に皺をよせた。

「いないなー。ニーナのパパはどこだろうな?」
「うん・・・」
 いくつかの部屋を回ったのだが、見当たらない。でも、ここにいることは確かのようだ。
「おお!?エド。隠し子か?」
 畏怖されている司令官のエドワードにそう話しかけるのは、彼しかいない。
「エネル大尉。迷子だよ。パパを探してるんだよなー」
「うん」
 ふたり同じような笑顔で向き合うので、エネルは思わず笑う。
「おまえら、姉妹か」
「せめてキョウダイっていえ!」
「まあまあ」
「それで、この部屋はいないか?」
「ううん。いないよ、エドお兄ちゃん」
「そうか・・・。じゃあな、エネル」
「おう」
 エネルは二人を見送っていたが、まだニヤニヤしている。
「カワイイナ」
「何にやけてるんですか?」
「おう、エルリック少佐。今、エドがなー、かわいかったんだよ」
「きましたか。かわいいって言わないでくださいよ。兄に向かって・・・」
「おまえもそう思ってるんだろ?」
「そりゃ、まあ・・・。って、ナイショですけどね。で、どっちに行きましたか?」
「あっち」
 エネルが指さした方向は、自分たちの執務室の方だった。

「まさか、ここにはいないだろ」
 自分の部下がいる大部屋の前で、入ろうか迷っていると、アルフォンスがポンとエドワードの肩をたたいた。
「大佐」
「おう。この子の父親しらね?」
「知ってるわけないでしょう。その子、ニーナっていうんだってね」
 エドワードは視線をそらして、にっと笑った。
「ああ。カワイイだろ」
 エドワードは抱っこしている少女の顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃんは?」
 アルフォンスは人好きのする笑顔を浮かべて、
「エド兄ちゃんの弟のアル兄ちゃんだよ」
「おとうと?アル兄ちゃんは大きいね」
「なんだとー、ニーナ」
「それはね、ニーナ。エド兄ちゃんは牛乳が嫌いだからだよ」
「あー、好き嫌いはいけませんよ」
 その大人びた言い方に、アルフォンスもエドワードも笑った。
「に、ニーナ!!」
 廊下の向こうから、男性が走ってきた。男は、エドワードの前にくると、緊張した面持ちで敬礼をした。
「申し訳ございません!!」
「パパ!」
 ニーナの明るい表情とは反対に、男は重々しく震える唇で頭を下げた。
「ニーナの父親か?」
「はっ、カズン准尉ともうします。この度娘が大変ご迷惑をおかけしてすみません。降格なり、減俸なり、なんなりと・・・!」
 エドワードはカズンと名乗る男の肩をポンとたたいて、ニーナを抱くように促す。
「謝る必要なんてないだろ?ニーナの気持ちを考えろよ。純粋に、パパに会いに来ただけじゃないか」
 そうエドワードはニッと笑って、付け加えるようにこう言った。
「それと、ニーナを叱らないでやって。パパが大好きなんだよ」
「・・・はっ!」
 カズンは目を潤ませて、ニーナを撫でてやった。
 エドワードは自分の執務室に入っていく。アルフォンスは兄らしいその行動に、苦笑をもらした。
「少佐も、申し訳ありません」
「いいえ。ニーナ、よかったね、パパに会えて」
「うん。エド兄ちゃんもアル兄ちゃんもありがとう」
「どうしたしまして。また、遊びにおいでよ、ニーナ」
「うん!」
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