よみもの アルエド(未来軍部)1

□イタズラ
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 そういったのは、キット少将だった。マスタングはふっと笑みを浮かべているだけだった。
東方司令部の練兵場を貸切り、アルフォンスの査定が行われた。彼は、一応兄同様、二つ名は『鋼』だが、様々な錬成が行なえる。竜巻の錬成など大気を操ること、土や石を操ること、最近は医療系にも興味をもっている。
「エルリック少佐。大佐は一緒に行わないのか?」
「大佐は研究レポートを用意しております。ですが、今日はわたしの相手をしてくださるとおっしゃっていたのですが・・・」
 マスタングがぐるっと見渡すと、暇だったのか練兵場を囲うようにして、軍人が集まっている。
「いや、わりィ。遅れた」
 そこへ、息を切らしてエドワードがアルフォンスの前に現れた。
「鋼の。相変わらず、どこにいるか見えなかったぞ」
「ご機嫌麗しゅう、マスタング少将殿。老眼に近づかれたかな」
 嫌味の応酬をしてから、エドワードはキット少将を見た。
「ようこそ、東方司令部へ。では、いまからエルリック少佐の査定を行わせていただいてよろしいですか」
「はじめたまえ」
 エルリック兄弟は、カツンと軍靴を鳴らし、敬礼をする。そして、練兵場の真ん中あたりへ移動した。
「実践査定なんて、めったに見られるもんじゃねーな」
「ああ。どうなんだろうな、大佐と少佐」
「きゃあ〜!でも、すてきだわ、少佐!」
「大佐も素敵よ!」
 黄色い声もまざり、アルフォンスはぽりぽりとかゆくもない頭をかいた。
「本気でこいよ」
「何いってんの。兄さん、徹夜続きでしょう?」
「お前のよさを引き出すくらいなら、できる」
「もう、しょうがないなー」
 二人は、にっと笑いあい、同時に両手を鳴らした。
 パン
 だが、錬成したものはまったく違う。エドワードが槍に対して、アルフォンスは、石の壁。エドワードの接近戦は熟知しているので、とりあえず一打を交わすものだ。
 そして、その間に武器を錬成し、壁へとびかかるエドワードの背後にまわって錬成した剣を突きつけた。それで終わるような兄ではない。兄は、身体をうまく利用する。
 エドワードがしゃがみこんで、同じような剣を錬成し、アルフォンスの腹に突き刺そうとする。それを後ろへ飛んで交わし、アルフォンスは竜巻の錬成をし砂埃を巻き上げた。丁度、その竜巻の真ん中にエドワードが入り、そしてアルフォンスも入る。
「おま、目が見えないじゃん!見てる人も」
「いいの。だって、僕と兄さんが戦うのより、僕の錬成をみてもらったほうがいいでしょ」
 まわりでは、目に砂が入るようで、ざわめいている。
「もういいって」
 エドワードはしゃがみこんで、アルフォンスの持っていた剣を肩口にもっていく。
「竜巻、解除しろ」
 エドワードの言うようにアルフォンスは竜巻を拡散させ、しゃがみこんでいる兄を見た。
 他人の目からは、兄が負けて膝を落としているようにみえる。
「少佐が勝ったぞ!?」
「わーすげえ!」 
 見学している軍人たちは騒ぎたてた。
 マスタングは、微かに口角吊り上げていて、
「これで錬成のすばらしさがお分かりいただけましたか?」
 キットに対する言葉だった。
「いえ、見えませんでしたな」
「は?」
「竜巻で、まったく見えなかった。これは失格でしょう」
「何をおっしゃています?錬成陣なしですべておこなえるのは、彼らしかおりませんぞ」
「しかし、見えなかったではありませんか」
 二人が静かに言い合っているのを、彼らの元へ走ってきた兄弟にも分かっていた。
「少佐が失格?何いってるんです?キット少将」
「君があいてでは、手を抜くことができるからな」
「これは、勝負ではありません。錬成を見ていただくものです」
「見えませんでしたよ、竜巻で」
「あんたは無能ですか。竜巻もれっきとした錬成ですよ」
「しかし、見えなければ判断しかねる」
 エドワードはかなり怒っているのだろう。だが、すこし耐えてるのが、わかる。
「じゃあ、あんたがアルの相手をしろ。っていっても、アルが五歳の時でも勝てないだろうね、あんたじゃあ」
 五歳といえば、錬金術を使い始めた年齢だ。
「な・・・ば、馬鹿にするのか!?貴様!」
 エドワードはこめかみを押さえて、ロイに向かって言い放つ。
「査定もいいが、こんな無能ふたりで俺たちの何を見にきたんだ!?時間の無駄だね。もっと優秀なやつつれてこいよな」
「くくく。そういうな、鋼の」
「貴様・・・・!」
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