よみもの アルエド(未来軍部)1

□おまじないより不確かなもの
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 そのまま、歩いていくと、噂話をしていた女性下仕官はアルフォンスが通り過ぎるのを、敬礼して待っていた。
 そして、とおりすぎると、
「エルリック少佐も素敵〜」
 と再び、黄色い声を聞き、再び脱力したアルフォンスだった。

 兄のエドワードは、本人が思っているよりモテる。女なら、まだいい。だが、男となると厄介だ。そういう、性癖をもつものは軍人には少なからずいるのだ。
兄は国家錬金術師といえど、体術で押さえ込まれたら、軍人には負けるかもしれない。錬金術にかんして、無敵を誇るが、体術では幼い頃からアルフォンスに勝てない。決して弱いわけではないのだが、弱点を突かれるとばらばらと崩れてしまうのが、兄の脆さだ。
よりによって、髪を下ろすなんて・・・。それは、僕だけの特権だったのに。
わけのわからない、苛立ちがアルフォンスの胸に広がっている。
「寝れないっ!」
 心配だと思ったら、もうだめだ。寝れるわけがない!
 一度は、仮眠室に入ったアルフォンスだったが、飛び起きて再び廊下を再び歩き出す。
「あら、どうされました?少佐」
 先ほど廊下で噂話をしていた女性下仕官が、アルフォンスに話しかけた。
「お顔が青いようですが・・・」
「ああ。昨日寝てないので」
 アルフォンスはそう答えて、そのまま執務室に向かった。
 寝てられない。寝られるはずがない!
 エドワードの個人の執務室へ入ると、一瞬動きが止まる。
「いない・・・」
 二十分もたってないだろ、僕が出ていってから!
「ガネット少尉!」
「はい!」
「大佐は!?」
「あ〜っと・・・」
 言いにくいのか、言葉を濁す。
「実は、外回りに行かれました」
「・・・・誰と?」
 ガネット少尉がここにいて、僕がここにいて、ローズ中尉は帰宅。と、いうことは。
「あの・・・」
「エネル大尉ですね」
「は、はい・・・」
「大佐に口止めされた?」
「あ、いえ・・・あの・・・」
 ガネット少尉の嘘をつけない性格は知っている。
「ああ、いいよ。ガネット少尉の所為じゃないから」
 そういって、アルフォンスはそのまま、大部屋で書類整理をすることにした。
だが、すぐに街の真ん中に穴が開いているという情報が入った。
「どうしますか?少佐」
「あ〜僕見てきますよ。どうせ、今日は非番なんで」
「すみません」
「留守お願いします」
「了解」

 アルフォンスがその現場に向かうと、道の真ん中にぽっかりと穴があき、さらに突起もある。それは、道全体で凸凹になっていた。
「お疲れ様です、少佐」
 一人の憲兵が敬礼する。
「一体何があったんですか?」
「いや、民間の錬金術師が錬成に失敗したようで・・・」
「犯人は?」
「もう、逮捕してます」
 アルフォンスは、ふうと息を吐く。
「じゃあ、下がって」
 アルフォンスは、両手をパンと鳴らして、道に両手をかざした。
「おお!」
 憲兵が驚いていたが、アルフォンスにとって、この程度なら子供の頃でさえできただろう。
「ありがとうございます」
「いえいえ。では」
 すぐに終わり、司令部に戻ろうとしたら、見慣れた金髪を目撃する。
 だが、今日は結んでないはず・・・。
 その、金髪には三編みがされていて、だけど服装は軍服。アルフォンスが兄の後ろ姿を忘れるはずがない。
「兄さん」
「うお!?」
 兄は、大仰に驚いて、振り向いた。
「アル!?おまえ仮眠室にいったんじゃなかったか!?」
「ここにいちゃいけないわけ?」
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