よみもの アルエド(未来軍部)1

□たまには外で
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「あ〜〜〜〜」
 覚えてたのか・・・。エドワードはチッと軽く舌打ちした。
「あれだけ酔ってて、よく覚えてたな」
「ん〜だって、あれ・・・。あ、いや。うん。じゃあ、下りてきて。受付あたりで待ち合わせね」
「あ〜い・・・」
 エドワードは渋々返事をし、片付けはじめた。

「お疲れ様です、大佐」
 四人ほどがその待ち合わせの場所にいて、敬礼されるが、エドワードはあ〜いいよいいよ、と手を振った。
「残りは現地集合だよ。いこうか」
 何故かご機嫌のアルフォンスを上目で見る。
 何考えてるんだか・・・。
 案内された場所は、コジンマリとした居酒屋と呼ぶのに相応しい場所だった。軍人が良く集う場所らしく、軍服で向かっても、店主はいらっしゃい、とにこやかに迎え入れてくれる。
「あれ、少佐。いつもと違う方がみえますね」
「ああ。エルリック大佐です」
 店主は、優しそうな中年の女性で、笑顔がとても柔らかい。
「あ、じゃあ、東方司令部の司令官様?」
「はい」
「あ〜っと、女将さん、様とか言うのやめてくれない?エドでいいからさ」
 そういうの苦手なんだよね、と笑うエドワードに気を良くした店主は、そうかい?と笑い返してくれた。
「でも、こんなカワイイ方だなんて知らなかったよ。今日はサービスしとくよ」
「かわ・・・!」
 まあまあとアルフォンスに押さえられ、他のメンバーが座るテーブルへと移動した。
「大佐何のみます?」
 いつのまにか現地集合だったメンバーも到着したようで、ざっと二十人。
「十人ほどっていってたじゃん・・・」
「兄さんが来るっていったら、みんな来たがって。これでも、断った人もいるんだよ?」
 兄弟でヒソヒソはなしている。
「大佐?」
「あ、何でもいいけど、甘いやつ」
「はい」
 やはり、エドワードが苦手だと思う会話が始まった。酒の席での定番話題といえば、恋だの愛だの、恋人の話だの・・・。やはり、エドワードの頭上でもその話が飛び回っている。
「でも、オンナとしては、積極的に来てほしいわ」
「女性は強いからね〜なかなかいけないんだよ」
 そんな会話が飛び交う。
「ねえ、少佐は?素敵な女性がいたらアタックする?それとも待つ?」
 ふと隣に座るアルフォンスに注目が集まる。
「気になるね〜。司令部でも一、二を争うほどのモテ男はどうなのよ?」
 親しげにそういう男は、ゴードン軍曹だ。アルフォンスの部下たちの間では、階級は関係ない。年齢がみんな近いので、そういう口調でも許される。
 エドワードも俯いてグラスを傾けていたが、ふとアルフォンスの横顔を見た。
 ああ、やっぱりカッコイイと思う・・・思ってしまう。
幼い頃は、丸かった頬から顎へのラインも、今は青年特有のスッキリとしたシャープなラインへと変わり、だけど目の温かさは変わらない。顔だけではなく、長い指がグラスを傾ける仕草も、何気ない癖も大人っぽくなった。
そう考えていると、エドワードははあ、とため息をついてしまう。
モテる理由がわかるんだよ。
そんな弟を見つめる女性の目が、自分を責めているように思えてしまう。エドワードが飲み会をいやがる理由。そのAだ。
「・・・ボクは待たないよ。積極的にいかないと、逃してしまうからね」
 くすっと笑ったアルフォンスに、女性たちはうっとりと見つめていた。アルフォンスといえば、エドワードを見ているのだが、エドワードは再び俯いている。
「少佐の好みの女性はどんな人?」
「・・・明るくて、強がりなんだけど、ぽろっと脆くて守ってあげたいなーって思う人・・・。といっても、ボクを愛してくれるか、が一番だけどね」
 そっかー、と女性の声がした。
 俺も今そう思ったよ。そっか・・・って。そんな理想があったなんて知らなかった。
「ねえ、大佐は?どうなんですか?」
「え?俺・・・?」
 話がふられるとおもわず、顔を上げる。
「はい。大佐の好みの女性は?」
「・・・・料理ができて、散らかしてても文句いいつつ、片付けてくれる人。でも、一番重要なのは、飽きずに傍にいてくれるか、だな。俺、何もしてやれないしさ・・・」
 俯き気味に、ボソボソ答える。
「そうですよ、重要なのは、傍にいてくれるか、ですよね」
「うん。一番大切だよね」
 会話がエドワードから移っていき、エドワードは心底ほっとした。
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