よみもの アルエド(未来軍部)1

□国家錬金術師とは?
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「アイツ・・・、私の、父は、国家錬金術師になった。そのために、努力してきたのも知ってる。だけど、国家錬金術師になったらすぐに、私と姉さんを捨てた!母さんもその後に錬成の事故だといって殺した・・・。アイツが・・・」
「・・・。借金のかたっていうのは?」
「アイツが国家錬金術師の金が足りないといって、金貸しに借りてたんだ。それが、返済できずに私を売った」
 それだけきくのに、エドワードは胸に広がる痛みを抑えきれない。だが、辛うじて、右の拳を胸で握ることで耐えた。
 アルフォンスの眉間には深い皺が刻まれている。
「それで、君の父親は今?」
「知らない。何かの罪で囚われたらしいけど、よく知らない」
「姉さんは?」
「・・・。どこかに住んでいる・・・。イーストシティだということは分かってるけど、会えない・・・」
 姉の話をするとき、キラは本当に寂しそうに目を伏せていた。
「会いたいんだね」
「あたりまえだ!」
「姉さんの名前は?」
「ティア。金髪碧眼で、三つ年上だよ・・・」
 それ以来黙り込んでしまったキラ。エドワードは「国家錬金術師なんて・・・」と怒りに唇を振るわせるキラを見て、深く眉間にしわを刻んでいた。

 とりあえず帰るところがないというキラを預かることになった。最終的には施設に預けることになるだろうが、今は命を狙われている。となると護衛が必要だ。エドワードが拾ったトラブルなので、部下にまかせるわけにはいかない。となると・・・。
そう、エルリック家に居候することになったのだ。
 二人で定時に仕事を切り上げ、キラを連れて帰った。
エドワードがリビングで報告書などを読んでいると、キッチンの方で笑い声が聞こえる。
 ふと、顔を上げるとキラとアルフォンスが楽しげに笑って、料理を作っている。
 あんな顔もするんだ、とエドワードはしばらく見つめる。それは、キラの表情が司令室にいたときより生き生きとしていて、かつ声を出して笑っているのだ。
アルフォンスも、ともて楽しげだ。エドワードといるときとはあまりしない表情だ。口調も、仕草も、違っている。もともと、アルフォンスはエドワードよりも子供を扱うのがうまい。アルフォンス自身も子供好きだということがあるだろう。
「こども・・・か」
 ふっとため息をついて、エドワードはテーブルに置いた書類をみる。
『ティアという少女の捜索についての報告書』
 今日一日で調べられたのは、この一枚だけ。十件の家にティアという名の少女がいるが、キラの姉だという証明がない。だから、空振りだろう。
 そう考えていると、電話のベルが鳴った。
 アルフォンスが気が付いて、キッチンから電話のあるリビングへと向かってくるが、それよりさきにエドワードが出た。
「はい、エルリック・・・。ああ、エネル大尉。・・・うん、うん。ちょっとまって」
 エドワードは電話を離して近くのメモ用紙にペンを走らせた。
 名前と住所と電話番号が書かれている。
「間違いないな?」
『ああ。間違いない』
「サンキュ。エネル。こんどおごるぜ」
 そういうと、エドワードは電話を切った。
「どうしたの?」
「ティアの居場所が分かった」
「え・・・!」
 キラは驚きつつ、瞳に希望の光が灯った。
「姉さんはどこに!?」
「・・・だが、すぐには会えないんだ。俺が明日、連れてくるからキラはアルとまっててくれ」
 ぎりっとふたたびキラはエドワードを睨む。
「国家錬金術師なんて信用なるか!私も行く!!」
「連れていけない」
 はっきりとした声でエドワードは伝えた。その真摯な金の瞳をみたキラは口をつむぐ。「ねえ、キラ。兄さんは国家錬金術師だけど、僕の兄さんなんだ。とっても優しい人だよ。キラも姉さんがいるからわかるでしょう?姉さんを嫌う人は、自分も嫌だよね」
 キラははっとしたように、アルフォンスを見て、そしてエドワードを見た。
「いい。キラが俺を嫌うのは別にいいさ。そんな過去があっちゃ、辛いもんな。でも、今回だけは信じて欲しい。最初で最後でいいからよ」
「じゃあ、約束しろ。必ず、姉さんを連れてくると」
「ああ。まってろ」
 エドワードはにっと笑っていった。その笑顔は、少しだけ、キラの表情を柔和にさせた。
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