よみもの アルエド(未来軍部)1
□心配するひと、されるひと1.2.3
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「……。わかった、ちょっとアルと二人にしてくれないか」
明らかに、沈んだ顔でエドワードはそれだけを伝えた。
ハボックとブレダは顔を見合わせ、ため息をついてからウィンリィとともに退室していった。
入れ替わりに入室したアルフォンスは、兄の顔が暗いことに気づき、僅かに眉根を寄せた。
「……大佐」
エドワードは、立ち上がって、大総統印の銀の箔押しがされた分厚い紙を、そっとアルフォンスに向けた。
「アルフォンス・エルリック少佐に、セントラル帰還命令がなされた。その後、すぐさま南の前線へと配属になる」
「……!!」
普段、クールなアルフォンスだが、さすがに驚いたのだろう。目を見開いていた。
「拝命書だ」
なかなか受け取らないアルフォンスだが、ふとその拝命書が僅かに震えていた。
「大佐…」
拝命書から顔を上げて、兄を見ると、彼は顔を下げていて表情がよく見えない。
「兄さん」
エドワードは微かに、顔をあげてアルフォンスを見た。
彼の表情は眉間に深い皺を刻み、目には微かに涙が浮かんでいた。
「これは、命令だ、少佐」
アルフォンスは今、彼が必死で、兄ということを隠して、大佐であろうとしていることに気が付いた。
そして、アルフォンスはその拝命書を受け取ったのだったー―
「一週間後、セントラルに向かうこと」
「了解」
アルフォンスは、右腕をこめかみにつけて、敬礼をした。
そして、くるりと踵を返す。
「武運を祈る」
「…ありがとうございます」
その拝命書は、弟が戦争にいくということ。二人が離れるということ。
その二つの試練を与えていた。
戦争に行けば、死が近くなることを知っている。兄は、そんな弟を守れない、悔しさ。苛立ち、心配。そんな思いが錘となって、笑顔を消した。
弟は、兄の傍で、兄を守れない悔しさ、苛立ち、心配。
おなじ、錘を抱えて、二人は一週間という短い時を過ごすことになる。